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ベトナムのラボ型開発完全ガイド|メリット・費用相場・失敗しない進め方
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2026.01.16
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2026.01.16

ベトナムのラボ型開発完全ガイド|メリット・費用相場・失敗しない進め方

ベトナムでのラボ型開発を検討する際、日本企業がまず知りたいのは「自社に本当に適しているのか」「費用や体制はどの程度か」「どんなリスクがあるのか」という点でしょう。 短期的なコスト比較だけでは判断できず、開発の進め方や組織との相性まで含めた理解が不可欠です。

結論から言えば、ベトナムのラボ型開発は、中長期でプロダクトを成長させたい企業にとって有効な選択肢です。 専属チームを継続的に確保し、アジャイル開発を前提とすることで、スピード・品質・コストのバランスを取りながら改善を積み重ねることができます。 受託開発のように要件を固定するモデルとは異なり、優先順位の変更や仕様調整に柔軟に対応でき、開発ナレッジがチーム内に蓄積される点が特徴です。

特にECSaaS、業務システムの内製化を進める企業では、同一チームが開発から運用・改善までを担うことで、リリース頻度を落とさずに継続的な価値提供が可能になります。

本稿では、ベトナムにおけるラボ型開発を成功させるために、日本企業が押さえておくべきポイントを整理します。 体制設計(PM/BrSE/QAの役割) コミュニケーションと運用ルール 契約・知的財産権・セキュリティの考え方 費用感とKPIの設計 ベンダー選定の判断軸失敗を避けるためのチェック観点

目次

ベトナムのラボ型開発とは?受託・準委任との違いをわかりやすく

まず、ラボ型開発の位置づけを明確にしておきましょう。 ラボ型開発とは、一定期間、専属の開発チームを確保し、発注側がプロダクトの方向性と優先順位を主導する開発モデルです。 成果物単位で契約する受託開発とは異なり、「人とチーム」を軸に開発を進める点が大きな特徴です。

ラボ型開発の基本的な考え方

専属チームを月額で確保: ベンダーはPM、BrSE、エンジニア、QAなどで構成される専属チームを編成し、契約期間中は原則として他案件と兼務しません。 これにより、業務理解や技術的な知見がチーム内に蓄積されます。

アジャイル開発との高い親和性: 発注側がプロダクトバックログの優先順位を決定し、スプリント単位で成果を確認・改善します。 要件変更を前提とした進め方が可能です。

知的財産権の扱い: 成果物の著作権や知的財産権は、原則として発注側に帰属する形で契約に明記します。

受託(固定価格)・準委任(T&M)との違い

ラボ型は、受託開発や準委任と比べると、契約対象・責任範囲・運用の考え方が大きく異なります。 以下は主要な観点での整理です。

ラボ型開発と固定価格・準委任の違いは?
ラボ型開発と固定価格・準委任の違いは?

ラボ型開発・準委任(T&M)・受託(固定価格)は、いずれも外部リソースを活用する開発手法ですが、 「何に対して契約するのか」「誰がどこまで責任を持つのか」という前提が大きく異なります。 以下の比較は、技術的な違いではなく、契約と運用の考え方に着目して整理したものです。

ラボ型開発では、成果物そのものではなく、一定期間・一定規模の専属チームを確保することが契約の中心になります。 そのため、月額費用は比較的安定しており、チーム構成を調整することでコストやスピードをコントロールできます。 要件変更が発生しても、都度見積りを取り直す必要はなく、優先順位の入れ替えによって対応できる点が特徴です。

一方、準委任(T&M)は「時間とスキル」に対する契約であり、特定の役割や人材を一時的に補完したい場合に向いています。 柔軟性はあるものの、チームとしての一体運用やナレッジ蓄積は限定的になりがちです。

受託開発(固定価格)は、成果物と要件を明確に定義したうえで契約するモデルです。 QCD(品質・コスト・納期)の責任はベンダー側が大きく担うため、 仕様が固まっており変更が少ない案件では有効ですが、 途中で要件が変わる場合は契約変更や追加費用が発生しやすくなります。

以下では、ラボ型開発と固定価格・準委任の比較の表です。

どの手法が優れているかではなく、不確実性の高さや開発期間、社内の関与度合いによって最適な選択肢は変わります。

観点 ラボ型 準委任(T&M) 受託(固定価格)
契約対象 チーム(人と時間) 工数(時間)+スキル 成果物・要件
予算の見え方 月額一定(構成変更で調整) 実績時間×レート 総額固定(変更は追加見積り)
成果責任 共創(進め方と生産性に共同責任) 実施責任(成果保証は限定的) ベンダーの成果責任が大きい
スコープ変更 柔軟(都度優先順位で調整) 柔軟(時間内で吸収) 契約変更が必要
チーム運用 専属・長期、ナレッジ蓄積 個人/小規模アサインが中心 プロジェクト都度の編成
管理方法 発注側がプロダクト/要求を主導 発注側がタスクを割当・管理 ベンダーがQCDを主導
適した案件 不確実性高い/継続開発/MVP→成長 特定スキル補完/短中期の増員 仕様明確/期限厳守/範囲固定

ラボ型開発と固定価格・準委任の比較

以上の比較から分かる通り、ラボ型開発は受託開発や準委任とは異なり、 契約や責任の考え方だけでなく、発注側の関与度合いも大きく変わります。 その特性を十分に理解したうえで導入しなければ、期待した効果は得られません。

ラボ型開発が機能するための前提条件

ラボ型開発は、契約形態を導入するだけで成果が出るものではありません。 発注側にも一定の関与と判断が求められる点を、事前に理解しておく必要があります。

PO/PMの役割が明確であること: 発注側に、プロダクトの方向性や優先順位を判断できる責任者(POまたはPM)が存在することが重要です。 技術的な詳細まで把握している必要はありませんが、 「今、何に取り組むべきか」「何を後回しにするか」を決められる立場であることが前提となります。

優先順位を継続的に見直す運用: ラボ型開発では、最初に決めた要件を固定するのではなく、 事業状況や検証結果に応じてバックログの優先順位を更新していきます。 この判断が止まると、チームは動けても成果が出にくくなります。

短いサイクルでの確認と振り返り: 開発成果をスプリント単位で確認し、 「何ができたか」「どこを改善すべきか」を定期的に共有できる体制が必要です。 これにより、認識のズレや手戻りを最小限に抑えることができます。

ラボ型開発に関するよくある誤解

誤解1: ラボ型開発は、単にコストを下げるための契約ではありません。 本質は、専属チームを安定的に運用し、 中長期で生産性と品質を高めていくための開発運用モデルにあります。

誤解2: ラボ型開発は、「人月を買い切る」考え方とは異なります。 人数の確保が目的ではなく、 専属チームとしての連携や業務理解を深めることで、 チーム全体のアウトプットを最大化することを狙います。

こうした背景を踏まえ、次章ではベトナムにおけるラボ型開発について、メリット・デメリットと向いている企業の特徴を整理します。

なぜ今ベトナムなのか?1人月相場・人材・他地域比較の要点

ベトナムが日本企業のラボ型開発拠点として注目されている背景には、コスト水準だけでなく、 人材の質や実務運用のしやすさといった複数の要因があります。まずは、 なぜベトナムが選ばれているのか、その実務的な理由から整理します。

日本企業がラボ型開発拠点としてベトナムを選ぶ実務的な理由

日本企業がラボ型開発の拠点としてベトナムを選ぶ理由は、単なるコストメリットだけではありません。 Bizmatchがまとめたレポートでは、ベトナムが日本企業から選ばれる背景として 日本語でのコミュニケーションが可能な人材が豊富であることが挙げられています。 これは、要件調整や設計フェーズ、ドキュメント作成などの実務において、 日本語対応力が高い人材が多いことが、日本企業にとって大きな安心材料になるためです。

カオピーズ_高等教育や学校教育以外(日本語学校)で学んでいる人の数が2021年度、インドネシアで計62,341名に対し、ベトナムでは計135,006名となります
高等教育や学校教育以外(日本語学校)で学んでいる人の数が2021年度、インドネシアで計62,341名に対し、ベトナムでは計135,006名となります 
出典: 国際交流基金(JF)による「海外日本語教育機関調査」の「結果報告書」
(2022年11月24日)

さらに、ベトナムは日本との時差が2時間と小さく、現場とのリアルタイムな コミュニケーションや打ち合わせがしやすい点も、 オフショア開発やラボ型開発の実務運用面で大きなメリットとなっています。 また、祝日数が日本より少なく、年間の稼働日数を確保しやすい点も 発注側から評価されている要素です。

このような実務面での使いやすさは、継続的なコミュニケーションと改善を前提とする ラボ型開発モデルと相性が良く、日本企業がベトナムを開発拠点に選ぶ理由として 多くの調査でも言及されています。

1人月単価の目安(ベトナム・主要都市)

次に、ベトナムでラボ型開発を検討する際に多くの企業が気になる 1人月単価の目安周辺コストについて整理します。 実際の費用は、エンジニアのスキルレベルや日本語対応力、稼働体制によって変動するため、 ここでは判断材料としての参考値をご紹介します。

ベトナムの人月単価は、日本語対応力や経験年数によって幅があります。 ラボ型では複数ロールを組み合わせてチームを構成するため、 個々の単価だけでなくチーム全体のバランスを見ることが重要です。

ロール 目安(万円/月)
BrSE(N2〜N1) 55〜95
PM(英語または日本語) 50〜110
シニアSE(5〜8年+) 55〜85
ミドルSE(3〜5年) 45〜65
ジュニアSE(〜3年) 35〜45
QA/テスター 35〜50
自動化QA/DevOps 55〜90
UI/UXデザイナー 40〜70
Data/MLエンジニア 60〜120
通訳・コミュニケーション支援 35〜45

初期費用と周辺コストの考え方

ラボ型開発では、人月費用に加えて、立ち上げ時や運用面での周辺コストも考慮が必要です。 これらは一度きり、または発生頻度が限定的なものが多く、事前に把握しておくことで 予算の見通しが立てやすくなります。

立ち上げ費用: 採用、環境構築、オンボーディングなどで20万〜80万円程度

ツール・セキュリティ: VPN、VPC、セキュリティツールは実費精算が一般的

コミュニケーション関連: 出張や現地訪問は年に数回を想定

為替・送金手数料: 為替変動リスクを見込んだ余裕を持つ

現地税制: VATなどは契約形態や役務内容により異なるため事前確認が必須

他地域との比較で見たベトナムの位置づけ

オフショア開発先はベトナム以外にも選択肢がありますが、 それぞれに明確な特徴と留意点があります。

ベトナム: コストの予見性が高く、若手から中堅層が厚い。 日系案件の経験やBrSE人材が豊富な一方、 祝祭日(テト)や都市ごとのレート差には注意が必要です。

インド: 英語運用と大規模スケールに強みがあり、 クラウドやデータ領域で高い専門性を持つ一方、 時差やPM負荷、レートの高さが課題になる場合があります。

中国: フルスタックや組込み分野に強い人材層があるものの、 知的財産や越境規制について最新情報の確認が不可欠です。

フィリピン: 英語対応やBPO・運用系に強みがありますが、 開発人材のスキルばらつきには注意が必要です。

国内ニアショア: 日本語・時差・ガバナンス面で安心感がある反面、 コストとスケール面では制約があります。

ベトナム国内の都市別傾向

ベトナム国内でも、都市によって人材の傾向や開発スタイルは大きく異なります。カオピーズはハノイ・ダナンにエンジニア拠点を持ち、各都市の強みを活かすことで、安定性と柔軟性を両立したラボ型開発を提供しています。

ベトナムのエンジニア人月相場と他地域比較のビジネスチャート
ベトナムの主要都市における経済・IT拠点としての特徴
出典: 進出マニュアル

以下では、ベトナムの主要都市における経済・IT拠点としての特徴を説明します。

ハノイ: 日系案件や金融・組込み分野に強く、BrSE層が厚い

ホーチミン市: Web・モバイル・スタートアップ案件が多く、最新技術に強い

ダナン: 定着率が高くコストも比較的安定しており、長期ラボと相性が良い

相場をどう使うか

これらの相場は、単なる価格比較ではなく、 ラボ型開発をどのフェーズで、どのような体制で進めるかを考えるための指針として活用することが重要です。

MVPフェーズ: BrSEとフルスタックエンジニアを中心にした少人数(3〜6名)体制

成長フェーズ: QA自動化、DevOps、データ人材を段階的に追加

費用対効果の可視化: スプリントごとにベロシティやバーンダウンを確認し、 コストと成果を定期的に見直します。

こうした背景を踏まえ、次章ではベトナムにおけるラボ型開発について、メリット・デメリットと向いている企業の特徴を整理します。

ベトナムにおけるラボ型開発のメリット・デメリットと向いている企業

ラボ型開発は「コストを下げる手段」として語られがちですが、実際には開発の進め方そのものを変える運用モデルです。 そのため、メリットとデメリットは表裏一体であり、自社の体制やプロダクトのフェーズに合っているかどうかを見極めることが重要になります。 ここでは、現場運用の視点から、意思決定に直結するポイントを整理します。

日本企業におけるIT理解の現状と、ラボ型開発を成功させるための壁

近年、ラボ型開発は柔軟性やスピードの高さから注目を集めていますが、日本企業においては依然として 「意思決定層のIT理解」が、導入や定着の成否を左右する重要な要素となっています。 各種調査でも、企業の役員層が必ずしもITやソフトウェア開発の実務経験を有しているとは限らず、 開発プロセスやオフショア体制への理解不足が、判断の遅れや期待値のズレを招くケースが指摘されています。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、デジタルビジネスを推進する企業を対象に、 DXやデジタル施策の取り組み内容とその成果について調査を行い、 「IT分野の業務を理解している役員の割合」別に比較した結果があります。

その結果、IT分野を理解している役員の割合が0~2割にとどまる企業では、 「成果が出ている」と回答した割合が明らかに低いことが示されました(下の図表)。

デジタルビジネス推進企業におけるIT分野の業務が分かる役員の割合/DXやデジタルビジネスの
取り組み内容と成果【IT分野の業務が分かる役員の割合別】
デジタルビジネス推進企業におけるIT分野の業務が分かる役員の割合/DXやデジタルビジネスの 取り組み内容と成果
【IT分野の業務が分かる役員の割合別】
出典: 「IT人材白書 2020」
~ 今こそDXを加速せよ ~選ばれる“企業”、選べる“人”になる ~
独立行政法人情報処理推進機構 社会基盤センター 編
 

この調査結果から、DXやデジタルビジネスの成否は、現場の技術力だけで決まるものではなく、 経営・意思決定層がITの基本構造や開発プロセスをどの程度理解しているかが、 成果創出に大きく影響していることが読み取れます。

特にラボ型開発は、要件を固定せずに改善を重ねながら進める特性上、 現場レベルだけでなく、経営・マネジメント層が一定のITリテラシーを持ち、 開発状況を正しく把握できる体制が不可欠です。 「自社にはラボ型開発が向いているはずなのに、運用がうまく回らない」という課題の背景には、 単なる技術力不足ではなく、コミュニケーション設計や意思決定プロセスの問題が潜んでいるケースも少なくありません。

カオピーズでは、エンジニアリソースの提供にとどまらず、 日本側の役員・管理層と開発チームの間に立ち、 開発状況や技術的な論点を分かりやすく整理・共有する支援体制を構築しています。 ITに詳しくない意思決定者であっても、ラボ型開発の価値や進捗を正しく理解できる環境を整えることで、 長期的に機能するオフショア開発体制の実現をサポートします。

ベトナムにおけるラボ型開発のメリット

ベトナムのラボ型開発を採用する国内企業が増えている背景には、 単なるコスト要因だけではなく、「開発の進めやすさ」や「継続運用との相性」といった 実務面でのメリットがあります。ここでは、現場視点で見た主な利点を整理します。

ベトナムにおけるラボ型開発のメリット

採用スピードと立ち上がりの早さ: ベトナムではエンジニア人材の供給が比較的安定しており、ラボ型の場合はベンダーの現地採用力を活かすことで、 最短2〜6週間程度で専属チームを編成できます。新規事業やリプレイス案件など、「今すぐ動きたい」フェーズとの相性が良い点が特徴です。

コストの予見性と運用しやすさ: 月額費用は「人数 × ロール構成」で決まるため、機能単位で見積もる固定価格型に比べて、 中長期の原価を把握しやすく、OPEXとして計画しやすくなります。 要件変更のたびに再見積もりが発生しない点も、現場のストレスを減らします。

仕様変更への強さと柔軟性: ラボ型はスコープ固定を前提としないため、 MVPを素早く作り、ユーザーの反応を見ながら改善を重ねるといった進め方に適しています。 市場や業務要件の変化が激しいプロダクトほど、この柔軟性が価値を発揮します。

ナレッジが組織に蓄積される: 専属チームとして継続的に開発を行うため、 仕様の背景や業務ドメインの理解がチーム内に残りやすくなります。 「毎回説明し直す」「担当が変わるたびに品質が揺れる」といった課題を抑えやすい点も大きな利点です。

開発を自社主導でコントロールできる: バックログの優先順位、品質基準、レビュー観点などを発注側が主導で決められるため、 「作らされる開発」ではなく「一緒に育てる開発」に近い形を取ることができます。

スケール調整のしやすさ: プロダクトの成長や開発フェーズに応じて、 契約条件の範囲内で段階的に増員・減員できる点も、長期運用では重要なポイントです。

これらのメリットを最大限に活かすためには、 同時に「どこでつまずきやすいか」を理解しておくことが重要です。

ベトナムにおけるラボ型開発のデメリット(対策を前提とした論点)

一方で、ラボ型開発は「任せきり」でうまく回るモデルではありません。 事前に理解しておくべき前提条件や運用上の論点を押さえずに導入すると、 期待していた効果が出にくくなるケースもあります。 ここでは、対策を前提とした主な注意点を整理します。

PO/PMの関与が不可欠: ラボ型では、要求整理や優先順位付け、成果物レビューを継続的に行う必要があります。 発注側にPOやPMが不在の場合、「何を作るか」が曖昧になり、生産性が下がるリスクがあります。

期待値のすり合わせが重要: スキルレベルやアウトプットの品質基準を言語化せずに進めると、 「思っていたものと違う」というギャップが生まれやすくなります。 初期段階で評価軸やレビュー方法を共有することが前提となります。

メンバー交代リスクへの備え: 長期契約では人員の入れ替わりは避けられません。 そのため、ドキュメント整備やペア作業、ナレッジ共有の仕組みを最初から設計しておく必要があります。

コミュニケーション設計の必要性: 日本語・英語・現地語をどう使い分けるか、 会議体や報告頻度をどう設計するかによって、開発効率は大きく変わります。

カレンダー差・文化差への配慮: 旧正月(テト)などの長期休暇は、事前に計画へ織り込む必要があります。 これはリスクというより、理解した上でマネジメントすべき前提条件と言えます。

セキュリティ・知的財産の管理: アクセス権限、ログ管理、契約条件の整理など、 日本国内と同等のガバナンスをどう担保するかを明確にすることが重要です。

向いている企業・プロダクト

ラボ型開発は、すべての企業・プロジェクトに万能な手法ではありません。 重要なのは、「要件の性質」と「意思決定の進め方」がラボ型の特性と合っているかどうかです。 その観点から見ると、以下のような企業・プロダクトは、比較的ラボ型開発との親和性が高いと言えます。

要件が流動的なスタートアップや新規事業、継続的に改善を行うSaaSやプロダクト開発、 アジャイル案件が増えて社内リソースが不足しているSIer・制作会社、 そして中長期ロードマップを前提に内製化を進めたい基幹システムなどは、 ラボ型開発のメリットを活かしやすい代表的なケースです。

向いていないケース

一方で、ラボ型開発は「どのような状況でも最適」というわけではありません。 プロジェクトの性質や、発注側の体制によっては、別の契約形態の方が 結果としてリスクを抑えられるケースも存在します。

仕様が完全に確定しており、短期間で成果物を納品する必要がある案件では、 固定価格型の受託開発の方が適している場合があります。 また、発注側にPOやレビュー体制がなく、 開発の意思決定そのものをベンダーに委ねたい場合は、 準委任や受託モデルを検討する方が安全です。

前述のIPAレポートでも示されている通り、 経営・意思決定層が最新の開発手法や評価方法を十分に理解していない場合、 現場で柔軟な開発モデルを採用しようとしても、 判断の遅れや期待値のズレが生じやすくなります。 ラボ型開発は、現場の技術力だけでなく、 意思決定プロセスやコミュニケーション設計を含めた 「組織としての準備度」が問われる開発モデルである点を、 あらかじめ理解しておくことが重要です。

失敗しない進め方は?契約形態・体制設計・コミュニケーションの要点

ラボ型開発の失敗事例を紐解くと、技術力そのものよりも、 「契約の曖昧さ」「体制設計の甘さ」「コミュニケーション設計不足」が原因となるケースが多く見られます。 ここでは、立ち上げ初期の90日間を安定軌道に乗せるために押さえておきたい実務上のポイントを整理します。

失敗しない進め方は?契約形態・体制設計・コミュニケーションの要点

契約形態

ラボ型開発では、契約内容がそのまま運用ルールになります。 後から解釈が分かれないよう、「起こり得る状況」を前提に具体的に定義しておくことが重要です。

月額固定+稼働レンジ: 例として、月160時間±10%を基準とし、超過・不足が発生した場合の精算方法を明記します。 これにより、繁忙期・閑散期のブレを吸収しやすくなります。

チーム専属条項: メンバー交代が発生する場合の事前通知、引き継ぎ期間、品質への影響最小化策を契約上で定めておくことで、 長期運用時の不安を抑えます。

知財・秘密保持: 成果物の著作権帰属、ソースコードの保管・提出方法、 OSSや第三者ライセンスの扱いについて明確にします。

監査・セキュリティ: 端末管理、ネットワーク制御、アクセス権限、ログ保全など、 日本側のセキュリティポリシーに準拠した運用が可能かを確認します。

契約期間とExit条件: 最低契約期間、縮小・解約時の予告期間、 終了時に引き渡される成果物やドキュメントの範囲を定義しておきます。

体制設計

体制設計は「人数を揃えること」ではなく、 誰が意思決定し、誰が実行するのかを明確にすることが目的です。

最小構成(MVP期の一例): BrSEまたはPMを0.5〜1名、フルスタックエンジニア2〜3名、QA1名程度からスタートすることで、 過剰投資を避けつつ検証を進めやすくなります。

標準的なロール: 発注側のPOを中心に、PM/BrSE、Tech Lead、SE、QA、DevOps、Designerといった役割を整理し、 「誰に何を判断してもらうのか」を明確にします。

権限と責任の明文化: 仕様変更、工数調整、品質基準の決裁権限と承認フローを事前に合意することで、 判断待ちによる停滞を防ぎます。

冗長化の設計: コア機能や重要領域は2名以上でカバーし、 メンバー交代を前提とした育成・引き継ぎ計画を組み込みます。

コミュニケーションと日常運用

ラボ型開発では、日々の運用ルールが生産性を大きく左右します。 「何を、どこまで、どの頻度で共有するか」を決めておくことが重要です。

開発セレモニー: デイリースクラム(15分程度)、2週間前後のスプリント、 定期的なレトロスペクティブを通じて改善サイクルを回します。

言語ルール: 要件定義や意思決定は日本語、技術的な議論は英語可など、 実務に即したルールをあらかじめ定めます。

ツールの統一: チケット管理(Jira等)、ドキュメント(Confluence/Notion)、 ソース管理(Git)を統一し、情報の分散を防ぎます。

進捗と品質の可視化: バーンダウンチャート、ベロシティ、欠陥傾向、稼働実績などを定例で共有し、 感覚ではなくデータで状況を判断できる状態を作ります。

カレンダー管理: テト(旧正月)や日本の大型連休を年初計画に織り込み、 スケジュールの認識ズレを防ぎます。

KPI例(合意してから計測することが重要)

KPIは「評価のため」ではなく、 チームを安定させるための共通指標として合意することが重要です。

スピード: 2〜3スプリントでベロシティを安定させ、以降の計画精度を高めます。

品質: リリース後の重大不具合ゼロ継続や、欠陥除去効率の改善を指標とします。

予見性: 見積り誤差の縮小や計画遵守率を通じて、運用の安定度を確認します。

チーム健全性: 離脱率やエンゲージメントの安定は、長期ラボ運用の重要なサインです。

90日間の立ち上げイメージ(例)

これらのKPIを実際の現場で機能させるためには、立ち上げ初期に「何を・どの順番で整えるか」を明確にする必要があります。 以下は、ラボ型開発を安定稼働させるための90日間の進め方を時系列で整理した一例です。

ラボ型開発を安定稼働させるための90日間の進め方と流れ
ラボ型開発を安定稼働させるための90日間の進め方と流れ
出典: 独立行政法人情報処理推進機構
情報システム・モデル取引・契約書(アジャイル開発版)

0〜2週: 契約確定、開発環境・アクセス設定、セキュリティルール、役割分担を明確化します。

3〜6週: バックログを整備し、Definition of Ready/Doneを合意した上で、 小さな機能からパイロット実装を開始します。

7〜10週: ベロシティを基準化し、QA自動化や監視などの基盤整備に着手します。

11〜13週: KPIをレビューし、必要に応じて体制や役割を最適化します。

ベンダー選定チェックリスト:日本企業が重視すべき評価軸

ベトナムのラボ型開発では、「どのベンダーを選ぶか」で成否の7割が決まると言っても過言ではありません。 価格や技術力だけで判断すると、立ち上げ後に「思ったより回らない」「コミュニケーションが噛み合わない」といった問題が顕在化しがちです。 ここでは、日本企業が失敗を避けるために確認すべき評価軸を、実務視点でわかりやすく整理します。

評価軸とチェックポイント

ラボ型開発の成否は、契約条件よりも「誰と、どの体制で進めるか」の見極めに大きく左右されます。以下では、ベンダー選定時に最低限押さえておきたい評価軸とチェックポイントを整理します。

カオピーズ_ベトナムのラボ型開発ベンダーの評価軸とチェックポイント

ドメイン適合性:
単に「開発経験がある」だけでなく、自社業界に近い案件をどれだけ経験しているかが重要です。 金融・医療・公共など規制が厳しい分野では、業界特有の制約を理解していないと、後工程で大きな手戻りが発生します。 過去の類似案件で、立ち上がりにどれくらい時間がかかったかを必ず確認しましょう。

技術力・技術スタック:
最新技術を使えるかよりも、「自社が使いたい技術を安定して運用できるか」が判断軸です。 アーキテクチャ設計を誰が担い、品質をどう担保しているのか(レビュー、テスト、自動化の有無)まで説明できるベンダーは信頼度が高い傾向にあります。

BrSE・日本語対応力:
ラボ型ではBrSEの質が生産性を大きく左右します。 日本語レベル(N2以上が目安)だけでなく、「要件を整理し、優先順位に落とし、開発側に噛み砕いて伝えた経験」があるかが重要です。 単なる通訳ではなく、実務の橋渡し役になれるかを見極めましょう。

プロジェクト運用力:
アジャイルやスクラムを「やっています」ではなく、「どう回しているか」を具体的に説明できるかがポイントです。 進捗・課題・品質がどの頻度で、どの粒度で共有されるのか。 レポートのサンプルを見せてもらうと、運用の成熟度が一目で分かります。

セキュリティ・認証:
端末管理やアクセス制御が曖昧なベンダーは、後から大きなリスクになります。 ISMS(ISO27001)などの認証を「取得しているか」だけでなく、「日常運用に落とし込まれているか」を確認しましょう。

採用力・拡張性:
ラボ型は長期前提のため、増員や交代が避けられません。 30〜90日でどの程度の増員が可能か、離職率はどれくらいか、バックアップ要員の考え方はどうなっているかを確認します。

契約・コンプライアンス:
知的財産の帰属、メンバー交代時の対応、契約終了時の成果物引き渡しなどは、最初に決めておくべき重要項目です。 「トラブル時にどうなるか」を具体的に説明できるベンダーは安心感があります。

トライアル・PoC:
いきなり本契約に入るのではなく、短いスプリントで試せるかどうか。 小さく試し、振り返り、改善できるベンダーほど、長期運用に向いています。

参照実績・評判:
継続率の高い顧客がいるか、失注した理由を説明できるかも重要な判断材料です。 都合の良い事例だけでなく、課題も正直に話せるかを見ましょう。

ベトナムでのラボ型の詳細や体制設計のイメージは、カオピーズのラボサービス概要で確認できます。

簡易スコアリングの考え方

評価を属人的にしないために、配点を決めて比較する方法が有効です。 例えば、ドメイン・技術・BrSEといった基幹要素を高配点にし、合計80点以上を合格ラインと設定します。 特に重要な項目は「足切り条件」を設けると判断がブレにくくなります。

RFPに必ず入れたいポイント

目的・スコープ・やらないこと(非ゴール)を明確にすることで、提案の質が大きく変わります。 あわせて、期待する体制、セキュリティ要件、KPIやレポート頻度、契約条件(期間・Exit)も事前に共有しましょう。

見極めの実践ポイント

最も確実なのは、同じ課題を使って短期スプリントを実施し、成果と進め方を比較することです。 BrSEやTech Leadと直接話し、設計やレビューの考え方を確認すると、机上の評価との差がはっきり見えてきます。

活用事例と効果測定:スピード・品質・ROIをどう出すか

ラボ型開発の価値は、「なんとなく良さそう」ではなく、数字で説明できるかどうかにあります。 ここでは、よくある活用パターンと、効果をどう測るかの考え方を紹介します。

ベロシティ・欠陥率・ROIを可視化するKPIダッシュボード

事例1:SaaS新機能の継続開発(スタートアップ)

国内開発のみでは月1機能が限界でしたが、ベトナムのラボチームを5名で構成したことで、 月2〜3機能を安定してリリースできる体制に移行しました。 初期は品質課題もありましたが、QA自動化を早期に導入することで、欠陥率は徐々に低下しました。

事例2:モバイルアプリ刷新(中小企業のDX)

リリースサイクルが60日以上かかっていたアプリを、2週間スプリントで改善。 CI/CDとクラッシュ分析を組み合わせることで、改善のスピードと品質を両立できました。

事例3:SIerの繁忙期対応

受託案件が集中する時期に、BrSEとQAを含むラボ体制を組成。 受入テスト工数を大幅に削減し、納期遵守率の改善につながりました。

KPI設計の基本

スピード(ベロシティ・リードタイム)、品質(欠陥密度・MTTR)、 予見性(計画遵守率)、ビジネス指標(機能到達率や解約率)をセットで見ることが重要です。 どれか一つだけを見ると、判断を誤りやすくなります。

ROIの考え方

ROIは「国内開発のみの場合と比べて、何がどれだけ改善したか」で考えます。 コスト削減だけでなく、リリース加速による売上や機会創出も含めて評価し、 四半期ごとに見直すことで、継続すべきかの判断材料になります。

可視化のポイント

チケット管理、CI/CD、監視データを一元化し、 スプリントレビューでは「価値・品質・予見性」の3点で振り返ることが重要です。 期末には、機能あたりのコストと価値を見て、投資判断につなげます。

まとめ

ベトナムのラボ型開発は、要件が変化しやすいプロダクトに対して、専属チームを確保しながらスピードと柔軟性を維持できる開発形態です。 成果物を固定して納品する受託開発とは異なり、開発を通じた学習や改善、将来的な拡張を前提とした進め方に適しています。

費用については、エンジニアやBrSEなどの役割ごとの人月単価に加え、立ち上げ時の初期費用や運用コストも考慮する必要があります。 月額費用だけでなく、コミュニケーションや管理工数を含めたTCO(総保有コスト)の観点で比較することが重要です。

立ち上げ段階では、30日・60日・90日といった区切りで開発基盤や運用ルールを整備し、段階的に安定させていく方法が一般的です。 運用面では、ベロシティや品質指標などを可視化し、チーム全体で共通認識を持つことが求められます。

言語や文化の違い、メンバー交代、セキュリティといった課題は、事前のルール設計やガバナンス、監査体制によって一定程度コントロールが可能です。 開発会社を選定する際は、類似案件の実績、BrSEの対応品質、運用体制の成熟度などを総合的に確認することがポイントとなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. ベトナムのラボ型開発はどんな案件に向いていますか?受託開発との違いは何ですか?
ベトナムのラボ型開発は、要件が流動的で、開発を進めながら改善や方向転換を行うプロダクトに向いています。 専属チームを一定期間確保できるため、スプリントごとに優先順位を調整しやすく、開発を通じて業務理解やナレッジが蓄積されていきます。 MVPの検証や、リリース後も継続的な改修が発生するサービスでは、この特性が大きなメリットになります。 一方で、仕様や検収条件が明確に固まっており、単発で成果物を納品する案件では、受託開発の方が適しているケースもあります。
Q2. ベトナムのラボ型開発の費用相場はどのくらいですか?内訳も知りたいです
ラボ型開発の費用は、担当する役割やスキル、日本語対応レベルによって幅があります。 目安としては、開発エンジニアが月額40〜70万円、BrSEが60〜100万円、QAが30〜50万円程度です。 例えば、BrSE1名・エンジニア3名・QA1名の5名体制の場合、月額でおおよそ210〜340万円規模になります。 これに加えて、立ち上げ時の初期費用や、税金、ツール利用料などが発生することもあるため、単純な月額だけでなく、全体コストを見て判断することが重要です。
Q3. ベトナムのラボ型開発を立ち上げる際の進め方のポイントは?
ラボ型開発は、最初の約3カ月間を段階的に設計して進めることで、安定した運用につながりやすくなります。 初期段階では、契約条件や開発ルール、役割分担を明確にし、スプリントを回せる状態を作ります。 次に、CI/CDやテスト自動化などの開発基盤を整え、品質とスピードの両立を図ります。 最後に、ベロシティやKPIを可視化し、チーム全体で共通の判断基準を持つことで、継続的な改善が可能になります。
Q4. ベトナムのラボ型開発会社はどのような基準で選ぶべきですか?
ラボ型開発会社を選ぶ際は、単価の安さだけでなく、実際の開発・運用を想定した総合的な視点が重要です。 技術力やアジャイル開発の実績に加え、BrSEの日本語対応力、見積や進捗管理の精度、セキュリティ体制などが成果に直結します。 過去の類似案件や、クラウド・QA体制の有無、情報セキュリティ認証の取得状況などを確認し、 可能であればPOCやトライアル、現地視察を通じて実際の運用レベルを見極めることが望ましいです。
Q5. ベトナムのラボ型開発のメリット・デメリットと、リスクを抑える方法は?
ラボ型開発は、コスト効率と開発スピードに優れ、スコープ変更にも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。 一方で、言語や文化の違い、品質管理、メンバー交代時の影響など、運用面での工夫が求められます。 BrSEの配置やKPIの可視化、引き継ぎルールの整備などを事前に設計することで、これらのリスクは抑えやすくなります。 カオピーズでは、体制設計から開発・運用までを一貫して支援し、ラボ型開発を安定的に立ち上げるサポートを行っています。
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