レガシーシステムのモダナイゼーションとは?手法比較と進め方を徹底解説
レガシーシステムをどう今風に変えていくべきか。 「いくらかかる?」「どれくらい時間が必要?」「失敗しない?」と感じている方に向けて、まず結論からお伝えします。
ポイントは、最初から全部を作り直さないことです。事業の目的を起点に現状を整理し、7R(そのまま移す/一部だけ作り替える/設計を見直す などの選択肢)を組み合わせながら、少しずつクラウドへ移行する進め方が、最も現実的でリスクが低くなります。
この方法なら、全体コスト(TCO)を抑えつつ、セキュリティや安定稼働を強化でき、投資効果(ROI)も早い段階で実感できます。
たとえば、周辺の機能はそのまま素早くクラウドへ移し、中核となる業務はAPIで切り出して段階的に再構築。データは既存システムと連携しながら移行することで、業務を止めずに価値提供を続けることが可能です。
本記事では、レガシーシステムのモダナイゼーションを進める際の判断ポイントから、 全体像の描き方、失敗しにくい進め方までを分かりやすく整理します。
目次
- レガシーシステムのモダナイゼーションとは?最短で理解する要点
- なぜ今やるべきか:日本企業が直面する現実
- どの方法が最適か:7Rの比較と選定フレームワーク
- 失敗しない進め方:現状診断から移行・定着までのロードマップ
- アーキテクチャ設計の勘所:クラウド、分割、データとセキュリティ
- 期間・費用・ROIの見積もり方:リスク管理とKPIで可視化
- ベンダー選定と内製化のバランス:パートナー活用の実践ポイント
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
レガシーシステムのモダナイゼーションとは?まず押さえる基本
レガシーシステムの話題は、 「専門的で難しそう」「IT部門の話」と受け取られがちです。 しかし実際には、事業のスピードや将来の選択肢に直結する経営テーマでもあります。 ここでは、技術の細かい話に入る前に、 モダナイゼーションの考え方をできるだけシンプルに整理します。
モダナイゼーションとは、「壊さずに、少しずつ進化させるための考え方」です。 単にシステムをクラウドへ移すことが目的ではなく、 ビジネスの変化に早く対応できる状態をつくることが本質です。
「レガシーシステム」「モダナイゼーション」の違い
出典:
「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて ― レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」
2025年5月28日 経済産業省
レガシーシステムとは何が問題なのか
レガシーシステムの問題点は、技術的な陳腐化による保守・運用コストの増大、セキュリティリスクの高さ、ブラックボックス化・属人化による柔軟性の欠如で、これがDX推進の妨げとなり企業の競争力低下や経済損失(「 2025年の崖 」問題)を引き起こすことです。 長年の改修を重ねた結果、 全体像が分かりにくく、触ること自体がリスクになっている状態 も含まれます。 次のような状況が見られる場合、将来的な影響を考える必要があります。
- OSやミドルウェアのサポートが終了している
- 仕様が分からず、特定の担当者しか対応できない
- 小さな変更でも時間がかかり、障害が発生しやすい
- 他システムと連携できず、監査やセキュリティ指摘が増えている
モダナイゼーションで目指す状態
モダナイゼーションのゴールは、単なるシステム刷新ではなく、 変化に柔軟に対応できる仕組みと運用体制をつくることです。
具体的には、新しい要望に対して短いサイクルで対応でき(リリースのスピードを週単位から日単位へと高め)、 テストやデプロイを自動化することで、品質を保ちながら改善を継続できる状態を目指します。
あわせて、自動化によって運用負荷を下げながら、 安全性や状況の見える化も確保されている状態が理想とされます。
例えば、APIやイベント駆動による拡張しやすい設計、 システムの状態を常に把握できる可観測性、 そしてセキュリティやコンプライアンスを自社でコントロールできる体制を整えります。
よくある誤解:とりあえずクラウドに移せば大丈夫?
モダナイゼーションで本当に大切なのは、目的と戦略を持ってクラウドを使うことです。 まず前提として、すべてのシステムやワークロードがクラウドに向いているわけではありません。 だから最初にやるべきことは、「何を移行すべきか」「何は残すべきか」を整理することです。 そのうえで、業務を止めない、もしくはダウンタイムを最小限に抑えるための現実的なタイムラインを設計します。
また、クラウドは「移した瞬間に安くなる魔法」ではありません。 コスト最適化は中長期視点で考える必要があります。 システム運用と財務を一体で管理するFinOpsの考え方を取り入れないと、 「クラウドにしたのにコストが読めない」という事態に陥りがちです。
さらに重要なのが、想定外への備えです。 ある大手小売業の企業では、オンプレミス環境からクラウドへ移行する初期段階で、 システムに深刻なトラブルが発生しました。 サービスを止められない状況の中、緊急的に一時的なクラウド環境へ切り替える体制を整えたことで、 ダウンタイムやデータ損失を回避し、移行計画そのものは予定通り完了しています。 この事例が示す通り、クラウド移行は「計画通りにいかない前提」で進めることが重要です。
運用面でも慎重な設計が欠かせません。
グローバル展開やM&Aを重ねる企業では、知らないうちにクラウド環境が増え続け、全体像が把握しづらくなるケースが少なくありません。
ある食品関連のグローバル企業では、こうした課題に対応するため、マルチクラウドを一元管理できるプラットフォームを導入し、単一の管理ポイントから可視化・統制できる運用体制を整えました。
また、モダナイゼーションは目の前の課題解決だけでなく、将来の成長を見据えて進めることが重要です。
多拠点で事業を展開するあるサービス企業では、あらかじめプライベートクラウド基盤を整備していたことで、パブリッククラウドへの移行も無理なく進めることができました。
その結果、全社としての拡張性を確保しながら、各現場の自律的な運営も両立しています。
つまり、モダナイゼーションとは単にシステムをクラウドへ移すことではありません。
ビジネスの目的を起点に、柔軟性・コスト・運用・将来の拡張性までを含めて全体を設計すること。
それこそが、クラウド活用を成功させるための本質的な考え方です。
なぜ今やるべきか:日本企業が直面する現実
「そのうち対応すればよい」と思われがちなレガシーシステムですが、 実際には待てば待つほど、選択肢が減り、リスクとコストが増えていきます。 いまモダナイゼーションが求められている背景には、 外部環境と社内事情の両方で、変化が同時に進んでいる現実があります。
外部環境の変化(セキュリティ・法規制)
OSやミドルウェアのサポート終了、サイバー攻撃の高度化により、 「何も変えずに使い続けること」自体が、最も危険な選択になりつつあります。 さらに、各種法規制や業界ガイドラインへの対応では、 ログ管理や権限管理、証跡の整備が前提となり、 旧来型のシステムでは対応しきれないケースが増えています。
社内の課題(人材・コスト・スピード)
古い技術を扱える人材は年々減少し、 保守や運用にかかるコストは確実に増えています。 その一方で、ビジネス側からは データ活用や他サービスとの連携、迅速な改善が求められており、 変更に時間がかかるシステムは、 競争力を下げる要因になりつつあります。
業界別に見た効果
モダナイゼーションの効果は、業界ごとに現れ方が異なります。 ここでは、「技術が新しくなること」そのものではなく、 業務やサービスがどう変わるのかという視点で整理します。
- 金融:外部サービスとの連携がしやすくなり、 新サービスや新しい顧客体験をスピーディに立ち上げられるようになります。
- 製造:現場データをリアルタイムに把握できるようになり、 予測精度の向上や業務改善にデータを活かせます。
- 物流:在庫や配送状況を一元的に可視化することで、 ムダや遅延を減らし、安定したオペレーションが可能になります。
- 公共:利用者の増加にも耐えられる仕組みを整えつつ、 災害時でもサービスを継続できる体制を構築できます。
どの方法を選ぶべきか:7Rを「判断の考え方」として理解する
7Rは、専門用語を並べたチェックリストではありません。 既存システムを「残すのか」「変えるのか」「どこまで手を入れるのか」を判断するための選択肢の枠組みです。
重要なのは、7つの中から1つを機械的に選ぶことではなく、 現状の課題と目指す将来像のギャップを整理し、状況に応じて複数の手法を組み合わせて判断する視点を持つことです。
7Rの全体像をシンプルに捉える
7Rは、「できるだけ変えない方法」から「大きく作り替える方法」までを網羅しています。 実務では、まず影響の少ない方法から着手し、段階的に価値の高い施策へ進める ケースがほとんどです。
この考え方により、業務を止めることなく、 リスクとコストを抑えながらシステムを進化させることが可能になります。
よく使われる3つの方法の違い
名称を覚える必要はありません。違いは「どこまで手を入れるか」です。
-
リホスト(Rehost):
システムの中身はほとんど変えず、設置場所だけを変更する方法です。 短期間で実施でき、リスクも低い一方、根本的な課題は残ります。 -
リプラットフォーム(Replatform):
業務の仕組みはそのままに、基盤となる部分だけを新しくします。 運用負荷やコストを下げやすく、現実的な改善策としてよく選ばれます。 -
リファクタリング(Refactor):
機能は変えずに、内部構造を整理し直す方法です。 将来の改修や拡張をしやすくするための「土台づくり」と言えます。
7Rの選択肢をまとめて比較
| 手法 | 簡単な説明 | 主なメリット | 注意点 | 難易度 |
|---|---|---|---|---|
| Retain | 現状のまま使い続ける | 短期的なコストは最小 | 課題を先送りすることになる | 低 |
| Retire | 不要な機能やシステムを廃止 | コスト削減の即効性 | 業務影響の整理が必要 | 低〜中 |
| Relocate | 環境のみを移行 | 設備管理が簡素化 | 本質的な改善にはならない | 低 |
| Rehost | システムをそのまま移行 | 短期間で移行可能 | 改善効果は限定的 | 低 |
| Replatform | 基盤部分を最適化 | 運用効率・コスト改善 | 事前検証が必要 | 中 |
| Refactor | 構造を整理・分割 | 変更しやすくなる | 段階的な計画が必須 | 中〜高 |
| Rewrite / Rebuild | ゼロから作り直す | 最大の効果が期待できる | コストとリスクが大きい | 高 |
| Replace | SaaSやパッケージに置換 | 標準業務に適している | 独自要件には不向き | 中 |
※ 実際には、複数の手法を組み合わせて段階的に進めるケースが一般的です。
どう選ぶべきか:シンプルな判断の視点
「最適な方法」は企業ごとに異なります。 以下の視点で整理すると、判断しやすくなります。
- そのシステムが事業や顧客に与える影響の大きさ
- 現在のシステムがどれだけ変更しづらいか
- 安定稼働やセキュリティへの要求水準
- 社内チームのスキルや体制
- 投資額と効果を回収できるまでの期間
リスクの高い部分ほど、小さく試しながら判断することが重要です。
推奨される進め方と避けたいパターン
モダナイゼーションでは、「何をやるか」以上に 「どういう順番で進めるか」が成否を左右します。 ここでは、現場で成功しやすい進め方と、 逆にトラブルになりやすい進め方を整理します。
- 推奨: 影響の少ない部分から着手し、 移行 → 改善 → 構造整理を段階的に進める方法。 業務を止めずに効果を確認しながら進められるため、 リスクとコストを抑えやすくなります。
- 避けたい: 一括での全面刷新、 検証なしの分割、 データや運用の整理を後回しにする進め方。 初期段階で想定外の負荷や手戻りが発生しやすくなります。
失敗しない進め方:現状診断から移行・定着までのロードマップ
モダナイゼーションは、一気に作り替えるプロジェクトではありません。 現状を正しく把握し、リスクを可視化した上で、段階的に移行・定着させていくことが成功の近道です。 本章では、構想段階から実行フェーズまでを無理なく進めるための、実践的なロードマップを紹介します。
モダナイゼーション アセスメント 手順
モダナイゼーションを成功させるためには、最初に現状を正確に把握することが欠かせません。 アセスメントでは、「何が足かせになっているのか」「どこから着手すべきか」を明確にし、 技術・業務・運用を横断的に整理します。 期間は2〜8週間を目安に、後続の判断に耐えうる客観的な材料を揃えるフェーズです。
- アプリ棚卸し(依存関係/利用頻度/SLA/法規制)
- ソース解析(静的解析、複雑度、デッドコード、テスト有無)
- データ診断(スキーマ、品質、一貫性、移行難易度)
- 運用・障害データ分析(MTTR/変更失敗率)
- 7R候補マッピングとロードマップ案、概算費用/期間
ツール例:Micro FocusやAWS Mainframe Modernization、SonarQube、OpenRewrite、Terraform、Ansible等。
PoCと分割移行(Strangler Fig)
すべてを一度に移行するのは、リスクとコストの両面で現実的ではありません。 そのため、影響範囲や不確実性の高い領域はPoCで先行検証し、 既存システムを止めずに段階的に刷新していくアプローチが有効です。 ドメイン単位で切り出し、新旧システムを共存させながら移行を進めます。
- パターン:Strangler Fig、BFF、API Gateway + Adapter
- デプロイ:Blue-Green/Canary、Feature Flagで無停止切替
- 短サイクル:2〜4週間スプリントで小さく検証
ストラングラーパターンによるメインフレームの段階的モダナイゼーション
出典:
Microsoft Learn「Strangler Fig pattern」
データ移行・テスト・カットオーバー
データが最難所です。早期に方式を固定し、反復検証します。
- 方式:一括/段階、CDC(Change Data Capture)、デュアルライト
- テスト:契約テスト/回帰の自動化、性能・耐障害試験
- カットオーバー:リハーサル、ロールバック計画、フリーズ期間の定義
移行後の最適化と運用(SRE/Observability)
稼働後はSLO/エラーバジェットを定義し、運用の継続改善を回します。可観測性(メトリクス/ログ/トレース)を統合し、ボトルネックを定量把握します。
実務支援についてはカオピーズのDX推進支援およびクラウドサービスも参考になります。
アセスメントから段階移行までのロードマップ
出典:
デジタルガバナンス・コード3.0 改訂のポイント
2024年9月 経済産業省
アーキテクチャ設計の勘所:クラウド、分割、データとセキュリティ
モダナイゼーションの成否は、アーキテクチャ設計の段階でほぼ決まります。 ここでは「標準化・自動化・疎結合」を軸に、将来の変更や拡張にも耐えられる構成を目指します。 最新技術を選ぶこと自体が目的ではありません。自社の運用力に見合い、長期的に活用できる設計であることが重要です。
クラウド選定と基盤(AWS/Azure/GCP)
AWS・Azure・GCPはいずれも高機能ですが、どれを選ぶか以上に、 運用ルールや標準をどう揃えるかが、長期的な安定運用を左右します。
- 基盤ガードレール:アカウント階層、IAM、ネットワーク分離、タグ/コスト管理
- マネージド優先:RDS/Cloud SQL、メッセージング、サーバーレス(Lambda/Functions/Cloud Run)
- IaC:Terraform/CloudFormation、Blueprintsで再現性
- コンテナ:EKS/AKS/GKE、GitOps(Argo CD/Flux)
分割戦略(ドメイン駆動設計とマイクロサービス)
システム分割は「細かくすれば良い」ものではありません。 業務のまとまり(ドメイン)やチーム体制を踏まえ、無理なく変更できる単位で切ることが重要です。
- 境界づけられたコンテキスト、API first、契約テスト
- リバースプロキシ/Adapterで段階切替
- マイクロサービスは「運用自律」が条件(監視/オンコール/CI/CD)
データ基盤と統合(CDC・API・イベント駆動)
モダナイゼーションを段階的に進める上では、新旧システム間でデータをどう連携・統合するかが重要なポイントになります。 業務を止めずに移行を進めるためには、リアルタイム性と整合性を両立したデータ基盤の設計が欠かせません。
- データ同期:CDC(Debezium、Datastream等)で新旧整合
- 連携:API Gateway/Service Mesh、イベントバス(Kafka/PubSub)
- 分析:データレイク/ウェアハウス、データ品質/ガバナンス、PIIマスキング
セキュリティとコンプライアンス(APPI・FISC・J-SOX)
クラウド活用を進める際には、技術面だけでなく、セキュリティや各種規制への対応も避けて通れません。 特に日本企業では、法令・業界ガイドラインを踏まえた設計と運用体制の整備が、プロジェクト成功の前提条件となります。
- 基本:最小権限/IAM境界、KMSで暗号化、秘密情報の保護
- ログ:改ざん耐性、長期保管、監査クエリ性
- 開発:SAST/DAST/SBOM、依存脆弱性対応、セキュリティゲート
- プロセス:職務分掌、変更管理、J-SOX統制の証跡
期間・費用・ROIの見積もり方:リスク管理とKPIで可視化
モダナイゼーションの計画段階で最も多い悩みが、「どれくらいの期間と費用がかかり、投資は回収できるのか」という点です。 本章では、経験則だけに頼らず、リスクと不確実性を織り込んだ見積もりの考え方と、 KPIを用いて意思決定と進捗管理を両立させる方法を整理します。
見積もりは「範囲×難易度×不確実性」の関数です。 可視化されたKPIで意思決定と進捗管理を両立させます。
期間の目安とリスクバッファ
プロジェクト期間は、対象システムの規模や移行パターンによって大きく変動します。 ここでは、一般的なモダナイゼーション案件における目安と、 想定外の遅延を防ぐためのリスクバッファの考え方を示します。
- 小規模(1〜3アプリ、IaaS移行中心):3〜6カ月
- 中規模(10〜30アプリ、分割/リプラットフォーム):6〜12カ月
- 大規模(全社/メインフレーム含む):12〜36カ月
バッファは技術不確実性とデータ移行の難度に応じ、 全体期間の10〜30%を確保します。
レガシーシステム モダナイゼーション 費用 相場
費用感は選択する移行アプローチ(7R)によって大きく異なります。 初期費用だけでなく、移行後の運用コスト構造まで含めて評価することが重要です。
- リホスト:数千万円〜1億円台(台数・環境数で増減)
- リプラットフォーム:1〜3億円(運用標準化/DB移行含む)
- リファクタリング/分割:2〜5億円(対象機能とテスト整備量次第)
- リライト/リビルド:5億円〜(要件再定義/移行の二重投資)
- パッケージ置換:ライセンス/カスタマイズ幅に依存(数億円〜)

費用はCAPEXからOPEX(マネージド/サーバーレス)への置換により平準化が可能です。 補助金・助成制度については、年度ごとの要件を事前に確認してください。
ROI/TCOの算定とKPI例
投資判断では、短期的なコスト増減だけでなく、 中長期でどのような価値が生まれるかを定量的に示すことが求められます。 ROIとTCOをKPIで可視化することで、経営と現場の共通言語を作ることができます。
- 便益:保守外注削減、障害損失削減、リリース頻度増による売上機会、クラウド最適化(RI/Savings Plans)
- コスト:初期投資、クラウド月額、トレーニング、運用ツール
- KPI例:デプロイ頻度、変更失敗率、MTTR、SLO達成率、クラウド単位コスト(円/取引)
回収期間は1.5〜4年が目安です。 初期フェーズでは一定のコスト増を許容し、 2年目以降に効率化の効果を回収する前提で計画を立てます。
リスク管理とガバナンス
モダナイゼーションは技術プロジェクトであると同時に、 経営リスクを伴う取り組みでもあります。 想定外の遅延や品質低下を防ぐためには、 技術面だけでなく、リスク管理とガバナンスを初期段階から明確に設計することが不可欠です。
- リスク登録票と定量評価(確率×影響)
- 段階ゲート(アセスメント→PoC→本番)の合意
- 監査対応:変更管理、権限、ログの証跡化
- 契約:成果物定義、品質基準、検収条件、ペナルティ/インセンティブ
ベンダー選定と内製化のバランス:パートナー活用の実践ポイント
レガシーシステムの刷新では、「すべて外注するか」「すべて内製するか」という二択ではなく、 どこをパートナーに任せ、どこを自社に残すかを見極めることが重要です。 特にフレームワーク移行やモダナイゼーションでは、短期的な移行完了だけでなく、 移行後に自社で運用・改善できる体制をどのように構築するかまでを見据える必要があります。
目的は「移行の成功」と「内製力の獲得」の両立です。 RFPの設計段階から、移行中の役割分担、稼働後の運用・改善体制までを 一気通貫でプランニングすることが、長期的なDX成功につながります。
RFI/RFPと評価基準
モダナイゼーションを成功させるためには、早い段階で期待値と前提条件を揃えることが重要です。 RFIとRFPを段階的に使い分けることで、実現可能性の見極めとベンダー比較の精度を高めることができます。
- RFI:実現可能性とアーキテクチャの方針の擦り合わせ
- RFP:スコープ、非機能(SLA/SLO/BCP/セキュリティ)、データ移行方針、テスト/品質、体制・ガバナンス、価格の妥当性
評価軸:実績(レガシーシステム モダナイゼーション 事例量)、技術力(7R/クラウド/データ/セキュリティ)、 標準化(IaC/GitOps)、PoC能力、リスクマネジメント、ナレッジ移転計画。
ベンダー/ツールの選び方(国内SIer・クラウド・Mainframe)
レガシーシステムの背景や業界特性によって、最適なパートナーやツールは異なります。 技術力だけでなく、統制・運用・将来拡張まで含めて総合的に判断することが求められます。
- 国内SIer:金融/公共の統制経験、監査対応、運用設計の厚み
- クラウド:AWS/Azure/GCPのリファレンス活用、マネージド重視
- メインフレーム/COBOL:AWS Mainframe Modernization、Micro Focus、自動変換ツール(Blu Age等)の適用検討
- プラットフォーム:OpenShift/Kubernetes、サービスメッシュ、観測基盤
内製化ロードマップとCoE
移行を「外注プロジェクト」で終わらせず、将来の自走につなげるためには、 内製化を前提としたロードマップ設計が欠かせません。
- 段階化:初期はベンダー主導+シャドー、次に共同、最終的に自走
- CoE:アーキ・SRE・セキュリティ・データの横断チーム
- 育成:リスキリング(クラウド/CI/CD/セキュリティ)、標準テンプレート/IaCカタログ
契約・SLAと体制設計
モダナイゼーションは一度きりの移行ではなく、継続的な改善が前提となります。 そのため、契約条件やSLA、運用体制を初期段階から明確に定義しておくことが重要です。
- 契約:成果物/受入基準、変更管理、ナレッジ移転の明文化
- SLA:可用性、応答/復旧時間、容量計画、セキュリティ監査
- 体制:製品チーム(プロダクトオーナー、エンジニアリング、SRE)での継続改善
伴走型の開発体制やクラウド実装力については カオピーズのシステム開発や オフショア開発も参照ください。
まとめ
レガシーシステム モダナイゼーションは事業継続性と競争力を両立するための重要な経営課題です。要点は「何を残し、何を変えるか」を定義し、ビジネス価値に直結する領域から小さく始め、確実に前進させること。
現状評価と技術負債の可視化、目標アーキテクチャ(クラウド/マイクロサービス)の設計、リホスト・リプラットフォーム・リファクタリングの適切な使い分け、データ移行と自動テスト、セキュリティと運用標準化、ガバナンスと人材育成までを一気通貫で計画することが成功の鍵です。
あわせて、関係者の合意形成、ベンダーロックインの回避、コスト最適化とSLA設計も抜け漏れなく進めましょう。
進め方に迷う場合は、短期アセスメントでロードマップと概算ROIを可視化し、PoCで仮説検証するところから着手するのが有効です。自社の状況に合わせた最適な進め方についてのご相談も歓迎します。
よくある質問(FAQ)
- Q1. レガシーシステムのモダナイゼーションとは何ですか?どのような効果がありますか
-
レガシーシステムのモダナイゼーションとは、老朽化した基幹システムを現代的なアーキテクチャへ段階的に刷新し、 ビジネスの変化に対応できる状態へと再構築する取り組みです。 技術的負債を解消することで、運用コストの削減や開発スピードの向上、セキュリティや可用性の強化といった効果が期待できます。 実際に、メインフレームをクラウド基盤へ移行することで、運用費を約3割削減し、 リリースサイクルを月次から週次へ短縮したケースもあります。
- Q2. どのモダナイゼーション戦略を選ぶべきでしょうか
-
戦略選定のポイントは、ビジネス目標と移行にかけられる期間・予算・リスク許容度をどう整合させるかです。 例えば、短期間でコスト削減を優先する場合はリホスト、 既存資産を活かしつつ改善したい場合はリプラットフォーム、 将来の拡張性や俊敏性を重視する場合は段階的なリファクタリングが有効です。 単一の手法に固執せず、システムごとに最適なアプローチを組み合わせることが重要です。
- Q3. 期間や費用、ROIの一般的な目安はどれくらいですか
-
規模や複雑度にもよりますが、小規模なモダナイゼーションであれば3〜6カ月、 中〜大規模の場合は6〜18カ月程度が一般的な目安です。 投資回収(ROI)は、12〜24カ月で見込まれるケースが多く、 資産の複雑さやデータ移行量、品質・セキュリティ要件が期間と費用を左右します。 運用コストを2割削減し、障害件数を半減させたことで、 1年以内に投資回収を達成した事例もあります。
- Q4. リスクやダウンタイムを最小限に抑える進め方はありますか
-
ダウンタイムや失敗リスクを抑えるためには、段階的な移行が有効です。 ブルーグリーンデプロイやカナリアリリースを活用し、 影響範囲を限定しながら検証と切り替えを進めることで、 問題があっても即座に元へ戻せる体制を整えます。 例えば、APIゲートウェイ配下で機能単位に切り替え、 トラフィックを1〜5%ずつ段階的に増やしていく方法が一般的です。
- Q5. 外部パートナーに相談すると、何が変わりますか
-
専門パートナーに相談することで、判断の精度とプロジェクトのスピードを大きく高めることができます。 カオピーズでは、現状分析から戦略策定、設計・実装、運用定着までを一気通貫で支援しています。 レガシー刷新には技術面だけでなく、計画立案や品質管理の知見が不可欠です。 評価ワークショップを通じて優先度を可視化し、 最小限の計画とPoCを短期間で提示することで、無理のない第一歩を支援します。



