Ruby言語で開発された国内外のWebサービス10選|Rubyが選ばれる理由とは?
Web開発の第一歩として「どの言語を選ぶか」は、プロジェクトの成否を左右するほど重要な判断です。その中でもRuby言語は、スピード感が求められるスタートアップ企業を中心に、今なお多くの開発現場で支持され続けています。シンプルで扱いやすい文法、圧倒的な開発効率、そして柔軟性の高さが、Rubyを選ぶ決め手となっているのです。
本記事では、Rubyの魅力を多角的に掘り下げつつ、実際にRubyを活用して構築された国内外の代表的なWebサービス10選をご紹介します。では、Ruby言語がどのような場面で活躍しているのか、そしてなぜ今も選ばれ続けているのか、その理由を一緒に紐解いていきましょう。
目次
- Ruby言語とは?その歴史と魅力
- RubyとRuby on Railsの違い
- 活躍するRuby言語で開発されたWebサービス10選
- Rubyを採用する際に考慮すべきポイント
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
Ruby言語とは?その歴史と魅力
Rubyは、1995年に日本人プログラマ・まつもとゆきひろ氏(通称Matz)によって開発された、オブジェクト指向のプログラミング言語です。 日本発の言語としては初めて、国際電気標準会議(IEC)によって国際規格として正式に認定された実績もあり、その品質と設計思想は世界的にも高く評価されています。
リリース当初はそれほど注目されていませんでしたが、2004年にRuby専用のWebアプリケーションフレームワーク「Ruby on Rails(Rails)」が登場したことで、状況は一変しました。
Railsの登場により、開発スピードと生産性が飛躍的に向上。2010年頃からスタートアップ業界が盛り上がり始めるとともに、Rubyもまた急速に支持を拡大していきました。 つまり、「素早く作って、素早く改善する」ことが求められるスタートアップにとって、Rubyはまさに理想的な言語として広く浸透していったのです。
※関連記事:Ruby言語とは?Ruby の特徴、メリット・デメリット、活用方法
RubyとRuby on Railsの違い
名前が似ていることから「同じものなのでは?」「RailsはRubyの上位版?」と混同されることもありますが、両者は明確に異なるものです。
具体的には、Rubyはプログラミング言語そのものであり、Ruby on RailsはそのRubyで構築されたWebアプリケーション開発用のフレームワークです。
フレームワークとは、Web開発に必要な機能(ログイン、フォーム、データベース連携など)があらかじめ用意されている「開発の土台」のようなもの。これを活用することで、ゼロからすべてを構築する手間が省け、大幅な開発効率の向上が見込めます。
したがって、Rubyについて調べると、必ずセットで登場するのが「Ruby on Rails」です。
Railsを使えば、ログイン機能やデータベースとの連携、フォーム入力など、Webアプリに必要な機能を少ないコードで効率的に実装できます。RubyとRailsはまさに開発現場におけるベストパートナーといえるでしょう。
活躍するRuby言語で開発されたWebサービス10選
国内外の有名なWebサービスの中には、Ruby(特にRuby on Rails)を中核技術として活用しているプロダクトが数多く存在します。 開発現場でも、Rubyは実践的な言語として、しっかりとその役割を果たし続けています。
ここでは、そんなRubyが活躍している代表的なWebサービスを、日本国内・海外からそれぞれ5つずつピックアップしてご紹介します。
日本国内でRubyが活用されているWebサービス5選
① クックパッド – 料理レシピの王者
日本最大のレシピ投稿サイト「クックパッド」は、月間1,500万人ものユニークユーザー、そして5億PVを誇る圧倒的な存在感を放っています。その巨大サービスの心臓部を支えているのが、実はRubyという言語です。
レシピの投稿・編集やユーザー管理など、日々膨大なトラフィックを処理する中で、Rubyの柔軟性と開発効率が大きな武器となっています。インタプリタ言語の宿命ともいえる速度面の課題を乗り越え、クックパッドはRubyの実力を世に証明した代表例といえるでしょう。
② Gunosy – 情報の海を読み解くニュースキュレーションの雄
個々のユーザーに最適なニュースを届けるパーソナライズ型情報アプリ「Gunosy」。そのスピーディーな成長の裏には、Ruby on Railsによる高速なプロダクト開発がありました。
現在では一部をGo言語へとシフトしていますが、Railsは今なお重要な役割を担っています。開発チームが運営する公式テックブログでは、Railsを活用したリアルな開発知見が惜しみなく共有されており、実践的な学びの場としても非常に参考になります。
③ クラウドワークス – 日本最大のクラウドソーシング
仕事を頼みたい人と受けたい人をつなぐ「クラウドワークス」。そのシステムは、スタートアップ初期からRailsの高い生産性を活かして構築されました。同社CTOが語るように、「将来の変化にも柔軟に対応できるアーキテクチャ」を実現した背景には、Railsの規約ベースの設計哲学があります。開発チームの拡大にも耐えうる品質と一貫性を保てる点が高く評価されています。
④ 食べログ – 飲食体験を変えた英断
口コミで店を探すという文化を築いた「食べログ」。2007年、急増するアクセスと開発スピードの課題を打破すべく、Railsの導入に踏み切りました。
その結果、コードベースは大幅にスリム化され、システム設計とUIデザインの分業も円滑に進行。Ruby on Railsの柔軟性が、サービスの進化を加速させる鍵となったのです。
⑤ freee – 会計の常識を覆したスタートアップの成功譚
freeeは、中小企業や個人事業主のためのクラウド会計ソフトとして、会計業界に革命をもたらしました。その誕生のきっかけは、創業者・佐々木氏(元Google)の手によるRuby on Railsの自学開発。
ゼロからのプロトタイプ構築と、サービスの立ち上げを一人で成し遂げたその姿は、まさに「Rails × スタートアップ」の理想形。freeeの急成長は、Railsの開発力が実ビジネスでいかに通用するかを如実に物語っています。
海外でRubyが採用されているWebサービス5選
Rubyは、その生産性と柔軟性を活かして、数多くのグローバルプロダクトの土台を築いてきました。以下では、Rubyを活用して構築された、海外の代表的な5個のWebサービスをご紹介します。
① Airbnb – 民泊の常識を変えたマッチングプラットフォーム
Airbnbは、部屋を貸したい人と借りたい人をつなぐグローバルな民泊サービスで、世界190カ国以上・10万以上の都市で、1日あたり200万人が利用しています。
「暮らすように旅する」という新しいスタイルを生み出し、旅行の概念に革新をもたらしたこのサービスも、初期の開発にはRubyが用いられました。
② GitHub – 世界中の開発者が集う「コードのSNS」
GitHubは、Gitをベースに、開発者がソースコードを共有・管理できる世界最大級のプラットフォームです。
そのSNS的な機能やユーザーインターフェースの多くは、Ruby on Railsで構築されています。
GitHubの登場により、エンジニアの働き方やチーム開発の文化が大きく変化したとも言われており、Rubyが生み出した象徴的な成功事例のひとつです。
③ Hulu – 高負荷な動画配信を支えた柔軟なフレームワーク
アメリカ発のHuluは、映画・ドラマ・アニメなどを定額で楽しめる人気の動画配信サービスです。
そのシステムは、Ruby on Railsによって構築されており、2012年にはRailsConfのスポンサーを務めた実績もあります。
動画配信という負荷の高い領域でも、Railsの柔軟性と生産性が十分に通用することを示した事例です。
④ Kickstarter – アイデアに価値を与えるクラウドファンディング
Kickstarterは、2009年に米国でスタートしたクラウドファンディングプラットフォームで、世界中のクリエイターが自身のアイデアを形にするための資金調達に活用しています。
スタートアップとしてスピード感を重視していたKickstarterは、開発言語としてRuby on Railsを選択。少人数・短期間での構築において、その柔軟性と即応性が力を発揮しました。
⑤ Twitter – 「つぶやき」から始まったグローバルSNS
Twitterも、サービス初期はRuby(Ruby on Rails)を用いて開発されていました。
その開発スピードの速さや構造のシンプルさは、サービスの急成長を支える大きな要因となりました。
現在は大量トラフィックに対応するためScalaなどに移行していますが、「Twitterの原点がRubyにあった」ことは、Rubyの可能性とポテンシャルを語る上で欠かせない事実です。
Ruby言語を採用する際に考慮すべきポイント
Rubyはその開発スピードと柔軟性の高さから、多くのスタートアップやWebサービスに愛用されています。しかし、すべてのプロジェクトにとって最適解とは限りません。特に、スケーラビリティや長期運用が求められる大規模システムでは、導入前に慎重な検討が必要です。ここでは、Rubyを導入する際に意識しておきたい主要なポイントを紹介します。
パフォーマンスに関する注意点
Rubyは記述性が高く、生産性に優れた言語ですが、C++やJavaなどの静的型付け言語と比べると、実行速度においてはやや不利な面があります。
とくに、大量のリクエストを処理するWebアプリケーションや、リアルタイム性が求められるシステムでは、パフォーマンスがネックになる可能性があります。
こうした要件を持つプロジェクトでRubyを活用する場合は、設計段階から十分なチューニングやシステム構成の工夫が不可欠です。
コーディングスタイルとチーム開発の整合性
Rubyの魅力の一つに「書きやすさ」がありますが、それゆえに開発者ごとの記述スタイルに差が出やすく、結果としてチーム全体の可読性や保守性が損なわれるリスクもあります。
これを防ぐには、プロジェクト開始時に明確なコーディング規約を策定し、定期的なコードレビュー体制を整備することが不可欠です。「自由な言語」だからこそ、チームでの“共通言語化”が鍵となります。
計算処理や高負荷処理への対応
複雑な数値演算や大量データへのアクセスなど、CPU負荷の高い処理をRubyのみで担おうとすると限界を感じる場面も少なくありません。
こうしたケースでは、必要に応じてC言語によるネイティブ拡張を導入したり、処理性能に優れたGoやRustなどと連携させることで、パフォーマンスを大幅に改善することが可能です。適材適所の言語選定が、全体の最適化を実現します。
並列処理の制約と現実的な対処法
Rubyの主要な実装であるMRI(Matz’s Ruby Interpreter)には、GIL(グローバルインタプリタロック)と呼ばれる仕組みが存在し、マルチスレッドによる並列処理に制限があります。
並列性が求められる処理では、マルチプロセス構成を検討したり、処理の一部を他言語で分担するなど、システム全体で柔軟に対応することが成功のカギとなります。
Rubyは決して「万能」ではありませんが、特性を正しく理解し、プロジェクトに合わせた設計を行えば、圧倒的な開発体験とビジネススピードをもたらしてくれる強力なパートナーとなります。
まとめ
「Rubyはもう古い」――そんな声は、もはや過去のもの。 今やRubyは、開発効率の高さや保守のしやすさといった本来の魅力が再評価され、実務で頼れる言語として再び注目を集めています。
カオピーズでは、要件定義から開発、保守運用まで一貫して高品質なサービスを提供しています。Rubyの特性を最大限に活かし、スピードと柔軟性を重視した小~中規模プロジェクトにおいて、多くの成功事例を蓄積しています。迅速かつ効率的なオフショア開発を通じて、多くのクライアント企業のDX推進や新規サービスの立ち上げをサポートしています。DXの推進とビジネスの成功に向けて、ぜひ私たちにご相談ください。
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よくある質問(FAQ)
Q1: Rubyはどのようなプロジェクトに最適ですか?
A1: Rubyは、特にウェブアプリケーション開発やスタートアップ企業のプロジェクトに最適です。簡潔なコードで素早く開発できるため、開発コストを抑え、スピード感を重視するような場面で威力を発揮します。Ruby on Railsというフレームワークを使い、多くのWebアプリケーションに必要な機能(ログイン、検索など)を容易に実装できます。
Q2: Rubyは大規模なシステムにも対応できますか?
A2: Rubyは処理速度が遅くメモリの消費量が多い、またコードの書き方に決まりがないなどの特徴から、大規模開発には向いていません。 しかし、シンプルなコードでプログラミングしやすく、スピード感をもって開発できるため、小規模開発においては人気の高いプログラミング言語です。
Q3: 企業がRubyを採用するメリットは?
A3: 企業がRubyを採用する主なメリットは、開発工数の削減、低コストでの開発、そして柔軟性の高い開発環境の提供です。Rubyは少ないコード量でプログラムを記述できるため、開発時間を短縮し、コストを抑えることができます。