ベトナムのオフショア開発で成果を出すための成功の秘訣
オフショア開発で成果を出すには、単にコスト削減を目的とするだけでは不十分です。品質・スピード・信頼関係という複数の要素をバランスよく構築することが成功の鍵となります。特に日本企業との協業においては、文化や働き方の違いを乗り越えるための仕組みと工夫が求められます。
ベトナムのソフトウェア開発会社「株式会社カオピーズ」では、2014年の創業以来、日本市場を中心に数多くのオフショア開発プロジェクトを手掛けてきました。
オフショア開発の代表的な課題を解決するため、最前線に立って努力しているBrSEやPMが不可欠です。
国境を越えて開発を行う上で、コミュニケーションは当然ながら必要不可欠ですが、開発において日々どんなことを大切にしているか、どういった問題に直面しているかについて、この記事では弊社の開発責任者の一人にインタビューしました。 現場で実際にお客様と接しているプロジェクトマネージャーの声を通じて、オフショア開発で成果を上げるために重視している取り組みをご紹介します。
インタビュー概要
- インタビュイー:プロジェクトマネージャー
- インタビュアー:カオピーズのマーケティングチーム
- 対象読者:日本企業の開発責任者、プロジェクトマネージャー
クライアントと開発チームの架け橋は誰?
~カオピーズで活躍するベトナム人PMに迫る~
カオピーズでのオフショア開発では、基本的にベトナム人BrSE(ブリッジ・システム・エンジニア)またはPM(プロジェクトマネージャー)がクライアントと開発チームの間に立ちます。
PMはプロジェクト全体を “鳥の目” で俯瞰し、マネジメント上の問題を解決します。BrSEは要件を正しく伝え、開発チームに理解させることが主な役割です。
オフショア開発の代表的な課題、「コミュニケーション」「品質」「技術レベル」、を解決するため、最前線に立って努力しているのは彼らであり、オフショア開発のキーパーソンと言えるでしょう。
日々どんなことを大切にしているか、どういった問題に直面しているか、PMを担当しているコンさんに話を聞いてみました。
―カオピーズに入る前の経歴を教えてください。
ハノイ工科大学で日本語とITを学び、2011年に大学を卒業した後、あるシステム開発会社に入社しました。入社当時の仕事はディベロッパーでしたが、徐々にBrSEの仕事が増え、一年間の日本での勤務等、BrSEとして多くの経験を積みました。現在はカオピーズでPMを担当しています。
―カオピーズで働いた感想を聞かせてください。
入社して、まず初めに思ったことは社員同士の繋がりが強く、家族のような雰囲気があって、仕事をしていてとても楽しいということです。
サッカーやバドミントン、ヨガ等、サークルがたくさんあって、就業時間外でも交流があるからでしょうね。とても過ごしやすいです。
そして、皆向上心を持って作業していることも印象的でした。語学やコーディング等様々な勉強会が社内で開かれていて、それはとても良いことだと思います。
―現在のプロジェクトではどういう役割を担っていますか?
プロジェクト全体の進捗管理や成果物の品質管理、効率的な業務フローの構築が主な仕事ですが、BrSEやディベロッパーの技術的なサポートもしています。Web会議にはBrSEと共に出席し、お客様とのコミュニケーションがより円滑に進むよう努力しています。
―仕事をする時に大切にしていることはありますか
役割上、どうしても、ダメ出しや改善要求をメンバーにしなければなりません。その時の伝え方を工夫しています。
「それではダメだ」ではなく「こうした方がいいんじゃない?」という感じに、言い方を変えています。
縮こまってほしくないんですよね。
勿論、厳しく言う時は言いますよ。
でもチーム全員が互いに意見を言えたり、フォローしあえる環境が、技術と品質の向上に繋がると私は思っています。
―仕事で難しいと感じる時はどんな時ですか
お客様と開発チームの認識が合致していなかった時ですね。
―どのように解決していますか?
解決策は、お客様と出来るだけコミュニケーションを取るようにすること、それに尽きると思います。毎日最低でも30分。お客様と成果物や開発スケジュールの共有、そして意見交換を行っています。
開発チームに対しても、スケジュールや開発方法の確認を頻繫に行っています。毎朝ミーティングを行い、一人一人の進捗、その日のタスクや問題の有無を全員で共有し、私からはお客様の要望を伝えます。メンバー全員がプロジェクトを理解していることが重要だと思います。
アジャイル開発を導入していることも、短期間でレビューやフィードバックを繰り返し行うという点でミスコミュニケーションを無くす対策になっていると思いますね。
―ベトナムのエンジニアの長所を教えてください。
勤勉なところです。終業後も、会社内外の勉強会に参加し、貪欲に知識を吸収しようとします。
また、これは、お客様に言われたことなのですが、成長速度が早いということです。プロジェクトが進むにつれ、ディベロッパーも成長していく、これがベトナムでのオフショア開発の魅力だと思います。
最後にチームワークが良いことです。特にカオピーズはこのチームワークが良いですね。
―コンさん自身も勉強会を実施していますね?
そうですね。週に一回、BrSEを集めて勉強会を行っています。
カオピーズではBrSEがPMも担うことが多いので、その週に起きた問題を共有し、その解決策を考えたり、プロジェクトの進め方を勉強しています。
また、私のチームでも難しい技術を使わなければいけなくなった場合はチーム内で勉強会を開き、理解を深めています。
―コンさん自身が今勉強していることは何ですか?
最近は技術だけではなくマネジメント方法に興味を持っています。チームの体制はお客様のご要望次第ですので、プロジェクト毎に異なります。どんなチームでも運営できるようになりたいし、アドバイスが出来るようになりたいですね。
―将来の夢は?
5年後くらいに、カオピーズで「Delivery leader」という役職を担いたいと思っています。
Delivery leaderは、お客様と開発チームの間で問題が起きないようにする、もしくは起きてしまった場合は解決をする役職です。この役職では、ひとつの案件だけではなく、複数担当するのが、Delivery leaderです。言ってしまえば、PMのリーダーみたいなものです。
現在のカオピーズには、この役職はありませんが、カオピーズが規模を拡大させた時に、たとえば同時に20件30件とプロジェクトをこなさないといけないようになると、この役職は必ず必要になってきます。その時は私の出番ですね。
―カオピーズで長く働く予定なんですね
もちろんです。カオピーズファミリーですから(笑)
―オフショア開発を成功させるため、お客様に準備していただきたいことは何かありますか?
請負開発の場合は、正確な情報ですね。
製品の目的、性質、仕様がハッキリとしているとこちらも作業がしやすくなります。
そしてラボ型開発では-というより請負型開発でも言えることですが-たとえ技術的なことに明るくないお客様でも、積極的に関わってほしいです。信頼して任せて頂けるのはありがたいのですが、任せっきりになると、認識相違が生まれやすくなります。何でもいいんです。例えば基本的な技術に関する質問だとか、大雑把な提案でも大丈夫です(笑)!
積極的に関わって頂くことがオフショア開発成功の鍵だと思います。
日本語が堪能なコンさんですが、また日本に行って勉強したいそうです。「複数のプロジェクトを担当するにはもっと日本語が上手くならないといけない。」そう語っていました。
彼のような優秀かつ勤勉なPMに出会うことで、ベトナムでのオフショア開発がより効率的になることを願っています。
「この会社が好きなので」と言いながら笑う、その笑顔がとても印象的でした。
オフショア開発で成果を出すために重視していること
つまり、オフショア開発で成果を上げるためには、単にコスト削減やリソース確保にとどまらず、日本企業の期待に応えるための体制・品質・対応力が欠かせません。最後では、オフショア開発の現場で実践されている3つのベストプラクティスをご紹介します。
情報共有と期待値調整による「透明なコミュニケーション体制」
オフショア開発で成果を出すには、透明なコミュニケーションが欠かせません。
・定期的な週次ミーティングや日報で進捗を共有
・Slackなどのツールを用いたリアルタイムのやり取り
・RedmineやBacklogを活用し、タスクと課題を可視化
➡ 情報の行き違いを防ぎ、期待値を常に一致させる
日本企業との信頼構築を通じて、オフショア開発で成果を出す仕組みを整えています。
高品質を実現するための「標準化された開発プロセス」
日本企業の品質要求に応えるには、開発工程の標準化と品質管理の徹底が不可欠です。
・仕様書を初期段階から整備し、要件の曖昧さを排除
・QAチームと開発チーム、PMの密な連携で品質担保
’テスト工程の内製化によりバグの早期発見・修正
・ISO9001を取得し、国際基準に沿った品質マネジメントを実施
➡ 「オフショア=低品質」という不安を払拭する体制
日本市場に最適化された「柔軟な対応力」
日本企業の文化や業務スピードに適応するため、
・日本語対応可能なブリッジSEが主導し、業務文化にフィット
・アジャイル開発やラボ型契約など、変化に強い契約モデルを採用
・日本企業特有の意思決定プロセスや丁寧な業務スタイルに適応
➡ 信頼関係を重視し、パートナーとして継続的に並走
最新技術への対応と提案力
・生成AI、OCR、RPA、クラウドなど最新技術への対応力
・概念実証(PoC)からの相談にも柔軟に対応
・技術トレンドに基づいたプロアクティブな提案が可能
➡ 技術革新のスピードに追随しながら、企業のDXを支援
このような取り組みにより、オフショア開発で成果を出すための土台がしっかりと築かれています。