ラボ型開発企業の選び方や比較ポイントを、短時間で整理したい方に向けたガイドです。
ラボ型開発は、専属の開発チームを月額で確保しながら進める開発モデルです。 要件変更に柔軟に対応でき、プロダクト理解や業務ナレッジが継続的に蓄積されるため、 中長期のプロダクト開発では費用対効果が高くなりやすい点が特長です。
導入時には、単純な単価比較ではなく、次のような観点で総合的に判断することが重要です。 技術スタックへの適合性やエンジニアの採用・育成体制、日本語での円滑なコミュニケーションやPM体制、 ISMSなどのセキュリティ認証、アジャイル開発の運用実績、チーム拡張のしやすさや離職率、 KPIや月次レポートの透明性、契約条件の柔軟性などが代表的なチェックポイントとなります。
例えば、あるSaaS企業ではMVPフェーズでエンジニア2名からラボ型開発を開始し、 プロダクト需要の拡大に合わせて5名体制へ段階的にスケールしました。 12か月で本番リリースに至り、外注コストを約30%削減すると同時に、 障害対応のSLO改善にもつながったケースがあります。
本稿では、ラボ型開発企業の選び方チェックリストやRFPの雛形、 POCや1〜3か月のトライアル導入、代替要員や途中解約条項の考え方、 偽装請負を避けるための留意点などを整理し、 ロケーション・企業規模・日本語対応力といった観点から横断的に比較します。
目次
- ラボ型開発とは?受託・SESとの違いをわかりやすく解説
- ラボ型開発企業の選び方と比較基準:失敗しない評価ポイント
- 料金相場と契約形態の実態:月額単価、最低契約期間、スコープ管理
- コミュニケーションと品質・セキュリティ体制:日本語対応、PM/QA、プロセス整
- 案件の条件と注意点:成功パターンと失敗リスク
- タイプ別おすすめ:ラボ型開発がフィットする企業・チームの選び方
- 導入から運用までの進め方:立ち上げ、KPI設計、継続改善
- 【2026年最新】ラボ型開発で押さえるべき変化点
- まとめ
- よくある質問(FAQ)
ラボ型開発とは?受託・SESとの違いをわかりやすく解説
ラボ型開発とは、一定期間にわたり貴社専属の開発チームを編成し、 プロダクトの成長に合わせて継続的に改善を行う開発モデルです。 要件が流動的なプロジェクトや、長期的な運用・改善を前提としたプロダクト開発において、 特に高い効果を発揮します。
ラボ型開発企業は、単なる外注先ではなく、顧客の内製チームの延長として機能しながら、 要件変更や優先順位の見直しに柔軟に対応し、価値提供を最適化するパートナーです。 この点が、成果物単位で契約する従来の請負型開発との大きな違いと言えます。
ラボ型開発の主な特徴
契約期間中はチームを専有し、バックログを軸に継続的な開発を進めます。 要件変更への耐性が高く、プロダクトや業務理解がチーム内に蓄積されることで、 開発スピードと品質の両立が図りやすくなります。
- 顧客側のPOやPMと連携し、アジャイル開発で共創
- ベロシティ向上に伴い、費用対効果が徐々に改善
- ナレッジがチームに残り、改善サイクルが加速
適用領域と向き・不向き
ラボ型開発は万能ではなく、適用領域の見極めが投資効率を左右します。 方向性を検証しながら進めるフェーズや、仮説検証を高速に回したいプロジェクトに適しています。
- 向いているケース:SaaSやアプリのグロース、新規事業開発、内製化移行期の補完
- 向いていないケース:完全固定仕様の一括請負、短期スポット作業、厳格な成果保証のみを求める業務
受託・SESとの違い
開発モデルごとの違いを俯瞰すると、意思決定の軸が明確になります。
| 項目 | ラボ型開発 | 受託・請負開発 | SES・技術派遣 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 継続的な開発と柔軟性 | 固定スコープの成果物納品 | 工数・スキルの一時補完 |
| 価格体系 | 月額・役割単価 | 固定費(変更は別途見積) | 時間単価 |
| 変更対応 | スプリント単位で柔軟 | 追加契約が必要 | 再手配が必要な場合あり |
| 責任範囲 | リソース責任+SLA/KPI | 成果物責任 | 個人スキル依存 |
| ナレッジ蓄積 | 高い(専属チーム) | 案件単位で限定的 | 低〜中(個人依存) |
| 主な適用領域 | プロダクト開発・DX推進 | 要件が明確なシステム構築 | 短期的な人員増強 |
『オフショア開発白書2024』によると、契約形態別の構成比では、 従来型の請負開発(請負型)に比べ、 ラボ型開発(準委任契約)がより高い割合を占めていることが示されています。 これは、日本企業が不確実性の高い開発や継続的な改善を前提としたプロジェクトにおいて、 柔軟性とスピードを重視する傾向が強まっていることを反映した結果といえるでしょう。
ラボ型開発企業の選び方と比較基準:失敗を防ぐ評価ポイントとチェックリスト
ラボ型開発は「どの会社に頼むか」で成果の8割が決まると言っても過言ではありません。 単に人月単価が安いかどうかではなく、 長期的にチームとして機能するか、リスクを吸収できる体制かを見極める必要があります。
評価軸(コア観点)
まずは、ラボ型開発の品質と安定運用を左右する 「最低限押さえるべき評価軸」を整理します。 これらは複数ベンダーを横並びで比較する際の共通言語となります。
- 言語・文化適合度: BrSEの日本語力(目安:N2以上)に加え、日本の商習慣や品質基準への理解があるか。 定例会議や課題整理を日本語で自走できる体制かを確認します。
- PM力・要件定義力: プロダクト視点での優先順位付けができるか、 スクラムやカンバンの運用が形骸化していないか、 ベロシティが安定しているかが判断材料となります。
- 人材層の厚み: 中堅〜シニア層の比率、バックアップ人材のプール有無、 離職発生時のリプレースSLAが明確かを確認します。
- QA・セキュリティ: テスト設計やCI/CDの整備状況、脆弱性対策、 ISO・ISMSの運用実態、VPNや端末管理などのアクセス制御が重要です。
- 業界知見: FinTech、EC、SaaS、製造DXなど、対象ドメインでの開発経験や レギュレーション対応の実績があるかを見極めます。
- スケールの柔軟性: 3名から10名、10名から20名といった増員時のリードタイムや、 繁閑に応じたスケールダウン条件が現実的かどうかがポイントです。
- コミュニケーションと時差対応: 稼働時間の重なり、オンサイトや出張対応の可否、 ドキュメントの使用言語や共有ルールも事前に確認します。
オフショア開発でベトナムが真っ先に想起される理由と現状
日本企業が初めてオフショア開発を検討する際、多くの場合はまず情報収集から始まり、 その過程で「どの国を検討対象とするか」を絞り込んでいきます。 その中で、オフショア開発と聞いた時にベトナムを思い浮かべ、 ベトナムに関する情報収集から着手するケースは少なくありません。
実際の調査データを見ても、オフショア開発の検討先としてベトナムは 他国と比較して高い割合を占めています。 フィリピンやインドといった従来の主要オフショア国と比べても、 ベトナムは検討段階で選ばれる確率が高く、 日本企業にとって「有力な第一候補」として認識されていることが分かります。
出典: 『オフショア開発白書2024』
オフショア開発検討先として最も検討されている国の割合は次の通りです:
- ベトナム:48%
- フィリピン:21%
- インド:13%
- その他(バングラデシュ・中国・ミャンマーなど):残り
ベトナムがオフショア開発の候補国として自然に思い浮かびやすい理由の一つは、 実際にベトナムでオフショア開発を行っている企業が 日本企業の身近な取引先や知人ネットワークの中に多く存在する点にあります。 成功事例や運用経験が共有されやすく、具体的なイメージを持ちやすいことが、 初期検討段階での想起につながっています。
また、ここ十数年にわたり、ベトナムはオフショア開発分野において ビジネスイベントや業界ニュース、専門メディアなどで 継続的に取り上げられてきました。 こうした情報露出の積み重ねにより、 「オフショア開発=ベトナム」という認識が 日本企業の中で徐々に定着してきたと考えられます。
Googleなどの検索データでも、例えば「オフショア開発 + 国名」で比較すると、 ベトナム関連ワードの検索ボリュームがフィリピンやインドを上回る傾向が見られます。 これは、日本企業の情報収集行動としてベトナムを候補にする人が多いことと一致します。
出典: Bizmatch
最後に、日本企業向けにオフショア開発サービスを提供する会社がベトナムには多数あり、 選択肢が豊富である点も人気の要因です。具体的には、 日系対応可能なベンダー、BrSE/PMの供給体制、 契約条件・サービス内容の多様性などが選ばれる理由に挙げられます。
比較チェックリスト(例)
実際の選定プロセスでは、説明資料や提案書だけでは見えないポイントも多く存在します。 そこで、打ち合わせやRFP評価時にそのまま使えるチェック項目として整理したのが以下の観点です。
- 立ち上げ: キックオフから初回リリースまでの計画内容とリードタイム。 「2〜8週間」といった期間設定の根拠が説明できるか。
- トライアル: 1〜3か月程度の小規模PoCが可能か。 途中解約や延長条件、評価KPIを事前に合意できるか。
- 契約条件: 準委任契約の範囲、リプレース条項(◯営業日以内)、 機密保持や著作権帰属、競業避止の考え方。
- 品質管理: Defect密度やLead Timeなどの定量KPI、 レビューや監査の実施頻度が明確か。
- セキュリティ: 端末持ち出し禁止、権限分離、監査証跡の取得、 脆弱性診断を提供できる体制があるか。
- 開発ツール: JiraやBacklog、ConfluenceやNotion、 SlackやTeams、GitHub/GitLab、CI/CD(GitHub Actionsなど)の運用実績。
- リスク対策: キーパーソンの複線化、属人化防止の仕組み、 引き継ぎ手順やBCP/DR計画の有無。
地域別に見る選定の視点
ラボ型開発は国や地域によって得意領域や運用スタイルが大きく異なります。 「どの国が優れているか」ではなく、 自社の案件特性や体制にどこがフィットするかという視点で比較することが重要です。
- ベトナム: コストと品質のバランスに優れ、日本語対応可能なBrSE層が厚い。 Web、モバイル、クラウド領域の実績が豊富です。
- フィリピン: 英語運用に強みがあり、BPO組織と連携することで CS運用まで一気通貫で対応できるケースがあります。
- インド: 高度なアルゴリズムやプラットフォーム開発に強み。 一方で、PM設計や仕様調整の進め方が成否を分けます。
- 国内: 日本語対応力と即応性が高く、オンサイトも柔軟。 コストは高めですが、ハイリスク案件との親和性があります。
出典: 国際交流基金(JF)による「海外日本語教育機関調査」の「結果報告書」
(2022年11月24日)
特に日本市場向けのラボ型開発では、 日本語での要件整理や日常的なコミュニケーションを担える人材層の厚みが、 立ち上がりスピードと品質安定性に直結します。 この点で、日本語学習者数が多い国は中長期的な体制構築の観点からも有利と言えるでしょう。
補足として、ベンダーの技術力や実績を確認する際は、 表面的な事例紹介だけでなく、実案件でどのような構成・KPI運用を行っているかを見ることで、 評価の精度が高まります。 例えば、ベトナム拠点で日本語対応のラボ型開発を提供しているKaopizのサービスや実績は、 比較検討時の一つの参考情報として活用できます。
料金相場と契約形態の実態:月額単価・最低契約期間・スコープ管理の考え方
ラボ型開発のコストは、役割やスキルレベル、拠点によって大きく変動します。 単純な「安い・高い」ではなく、相場感・契約条件・スコープ設計をセットで理解することが、 失敗しないラボ型活用の前提となります。
月額単価の目安(税別・一般的なオフショアレンジ)
まずは、ラボ型開発で多く採用されている 職種別・スキル別の月額単価レンジを把握しておきましょう。 以下は、ベトナムを中心とした一般的なオフショア開発の目安 (2026年版)です。
- PM/Tech Lead:50〜120万円
- BrSE(日本語N2以上):55〜100万円
- シニアSE(フルスタック/クラウド):65〜120万円
- ミドルSE:55〜95万円
- QA/テストエンジニア:45〜60万円
- UI/UXデザイナー:40〜60万円
- AIエンジニア:65〜120万円
- インフラエンジニア:45〜80万円
国内ニアショアやオンサイト体制では、 上記レンジに対しておおよそ20〜60%程度高くなるケースが一般的です。 為替動向や人材需要、希少スキルの有無によっても単価は変動するため、 固定的な価格表として捉えるのではなく「変動する相場」として理解することが重要です。
オフショア開発人材の月額人件費は、職種(プログラマー/シニアエンジニア/BrSE/プロジェクトマネージャー)や国・地域によって大きく異なります。 また、近年は人件費の増減傾向も国ごとにばらつきがあります。
上記ではベトナムにおける人材単価を紹介しましたが、以下では他国の平均的な人件費水準(2024年版)と前年からの変動率をまとめています。
最低契約条件とFTEの考え方
ラボ型開発では、1名単位のスポット契約ではなく、 一定規模・一定期間のリソース確保を前提とするケースがほとんどです。 そのため、FTE(フルタイム換算)と契約期間の考え方を正しく押さえておく必要があります。
- 最低FTE: 2〜3名程度から開始するケースが多く、 BrSE・SE・QAで構成される最小実行チームが一般的です。
- 最低契約期間: 3〜6か月が目安。 立ち上げやプロダクト理解にかかる学習コストを回収する期間として設定されます。
- ランプアップ期間: 小規模案件で2〜4週間、専門性の高い案件や大規模体制では 6〜8週間程度を見込むのが現実的です。
契約形態とスコープ管理(準委任契約の要点)
ラボ型開発の多くは、準委任契約を前提としています。 これは「成果物」ではなく「稼働・リソース」を提供する契約形態であり、 スコープ管理の考え方がウォーターフォール型とは大きく異なります。
- 契約形態: 基本は準委任契約による時間・リソース提供。 成果物保証が必要な場合は、SOWで別途取り決めます。
- 進捗管理: バーンダウンチャートやベロシティを用いて進捗を可視化し、 スプリントごとにストーリーの優先順位を見直します。
- 変更管理: 「予算固定・スコープ可変」を前提とし、 MoSCoWやWSJFなどのフレームワークで合意形成を行います。
- リプレース条項: 品質や稼働に問題が生じた場合の交代SLA (例:10〜15営業日以内)を明記しておくことが重要です。
- 支払条件: 月次締め・翌月支払いが一般的。 為替条項や増減員時の通知期間も契約書に明確化します。
コストに影響する主な要因
表面的な月額単価だけでなく、 実際の総コストはプロジェクト条件によって大きく左右されます。 特に以下の要素は、見積金額に直接影響しやすいポイントです。
- 人材構成(シニア比率、BrSEの関与度)
- 品質要求(自動テスト、非機能要件)
- セキュリティ環境(専用席、デバイス管理)
- 稼働時間の重なりや短期的なスケール要件などが
なお、2024年版『オフショア開発白書』では、上記の要素を考慮したラボ型開発プロジェクトの予算帯が整理・集計されています。参考資料としてご利用ください。
コミュニケーションと品質・セキュリティ体制:日本語対応、PM/QA、プロセス整備
ラボ型開発の成否は、技術力だけでなく、 初期段階におけるコミュニケーション設計と 品質・セキュリティ体制の作り込みに大きく左右されます。 ここでは、日本企業が特に重視すべき実務的なポイントを整理します。
日本語対応とコラボレーション設計
オフショア開発において最も誤解や認識ズレが生じやすいのが、 言語と情報共有の設計です。 日本語対応の有無だけでなく、 「どう共有し、どう合意を残すか」まで含めて設計することが重要です。
- 会議運用: 月1回のSteerCo、スプリント計画・レビュー・レトロスペクティブを定例化。 議事録は日英、または日越併記で共有します。
- ドキュメント管理: 要件や仕様、意思決定をConfluenceやNotionに集約。 PRDやADRのテンプレートを用いて属人化を防ぎます。
- ツールと時差対応: Jira/Backlog、Slack/Teams、GitHub/GitLabを活用し、 2〜4時間の稼働重なり時間を確保。 緊急時の連絡経路は二重化します。
PM/QA/DevOpsプロセス
ラボ型開発では、個々のエンジニアのスキル以上に、 プロジェクト全体を安定稼働させる PM・QA・DevOpsのプロセス設計が品質を左右します。
- 開発プロセス: スクラムまたはカンバンを採用し、 Definition of Ready/DoneやWIP制限、見積基準を共通化します。
- レビュー: 2名以上によるコードレビュー、 静的解析やセキュリティLint、 Architecture Decision Recordの運用を行います。
- テスト: テストピラミッド(Unit/Component/E2E)を意識し、 カバレッジ目標や回帰テストの自動化、 バグの重大度・優先度基準を明確にします。
- DevOps: CI/CD、Feature Flag、Blue-Green/Canaryリリースを採用し、 APMやログ、メトリクス、SLOによる可観測性を確保します。
セキュリティとコンプライアンス
金融・医療・公共分野などでは特に、 セキュリティ体制とコンプライアンス対応が ベンダー選定の前提条件となります。 技術対策と運用ルールの両面から確認することが欠かせません。
- 物理・端末管理: 専用席の利用、デバイス持ち出し禁止、 MDMや必要に応じた操作ログの取得。
- アクセス管理: ゼロトラスト原則に基づき、 VPN/SSO、環境ごとの権限分離、 KMSやSecrets管理を徹底します。
- プロセス: NDAや権利帰属の明確化、 第三者ライブラリ管理(SBOM)、 定期的な脆弱性診断を実施します。
- 認証・監査: ISMSやISO 27001の運用有無と、 監査対応力も重要な評価ポイントです。
KPI/SLAの一例
プロジェクトの健全性を定量的に把握するためには、 感覚的な評価ではなく、 事前に合意したKPI/SLAで継続的にモニタリングすることが重要です。
- デリバリー:ベロシティ安定度、リリース頻度、変更リードタイム
- 品質:Defect密度、回帰不良率、MTTR
- 体験:NPS/CSAT、エスカレーション件数
- オペレーション:SLA遵守率、オンコール応答時間
これらのKPI/SLAは、プロジェクト運営の状態を可視化するための一つの指標にすぎません。次章では、ラボ型開発を成功に導くために押さえるべき条件と、事前に注意すべきリスクについて整理します。
案件の条件と注意点:うまくいくケースとつまずきやすいポイント
ラボ型開発の成果は、単にコストが安いか、人数が多いかで決まるものではありません。 自社の進め方や案件の性質と、ラボ型という開発スタイルが合っているかどうかが、 投資対効果を大きく左右します。 事前に「うまくいく条件」と「つまずきやすいポイント」を整理しておくことで、 想定外のトラブルや手戻りを防ぐことができます。
うまくいっているラボ型開発に共通するポイント
ラボ型開発で安定した成果を出している企業には、 業種に関係なく、いくつかの共通した進め方があります。 技術の難しさよりも、「どう判断し、どう共有するか」がポイントになります。
- 目的と優先順位がはっきりしている: 何を作るのか、何を後回しにするのかを判断できる担当者がいて、 チーム全体で同じ方向を向いて開発が進められています。
- 改善を続ける仕組みがある: 定期的に振り返りを行い、 「どこがうまくいかなかったか」「次にどう直すか」を 形だけでなく実際の行動に反映できています。
- 情報がきちんと残っている: 仕様やルール、テスト方法などが整理され、 途中参加のメンバーでも内容を理解できる状態が保たれています。
- 判断のルールが明確: 誰が確認し、誰が最終判断するのかが決まっているため、 レビューやリリースが滞りません。
- 人が入れ替わっても回る体制: 引き継ぎ方法やナレッジ共有の仕組みがあり、 特定の人に依存しすぎない状態が作られています。
よくある失敗リスクと、その避け方
一方で、ラボ型開発が期待通りに機能しないケースにも いくつか共通した原因があります。 あらかじめ知っておくことで、多くは未然に防ぐことが可能です。
- 方向性が定まらない: 判断する人が不在だったり、決定が遅れたりすると、 開発が止まったり迷走します。 定例の意思決定の場を設けることで防げます。
- 特定の人に頼りすぎる: キーパーソンが抜けた瞬間に進まなくなるのは大きなリスクです。 複数人で内容を把握する体制づくりが重要です。
- 認識のズレが積み重なる: 文章だけのやり取りでは、細かいニュアンスが伝わらないことがあります。 具体例や画面イメージを使った説明が効果的です。
- 品質が徐々に下がる: テストが後回しになると、不具合が増えやすくなります。 自動テストやチェックルールを決めておくことが有効です。
- メンバー交代時の混乱: 引き継ぎが不十分だと、大きなロスにつながります。 交代期間を設け、引き継ぎ内容を明文化しておくことが重要です。
- セキュリティ事故: 権限管理が曖昧だと、思わぬ事故につながります。 必要最小限の権限設定と、定期的な見直しが欠かせません。
- 契約・法務面のトラブル: 指示の出し方を誤ると、契約上の問題が発生する可能性があります。 契約形態に沿った運用ルールを事前に整理しておく必要があります。
タイプ別おすすめ:ラボ型開発が向いている企業・チームとは
ラボ型開発は、どんな企業・どんな案件でも万能に使える手法ではありません。 ただし、「相性の良い条件」で導入できれば、 スピード感や柔軟性といったメリットを大きく引き出すことができます。 ここでは、専門知識がなくても判断しやすい実務目線で、 ラボ型開発が合うかどうかの考え方を整理します。
ラボ型開発が向いている案件の特徴
これまでの内容を踏まえると、ラボ型開発は 「途中で方針が変わる可能性がある案件」や 「継続的に改善していく前提のプロジェクト」で 特に効果を発揮しやすい開発スタイルだと言えます。
- 事業成長フェーズにあるSaaS・EC・FinTechのプロダクト開発、 既存システムの刷新、 モバイルアプリの継続改善、 クラウドやAIを段階的に導入していくプロジェクト。
- あまり向いていないケース: 納期・範囲・仕様が最初から完全に固定されている短期案件や、 変更を前提としないウォーターフォール型のみのプロジェクト。
| 企業・案件タイプ | よくある悩み | 判断のポイント | おすすめの進め方 |
|---|---|---|---|
| スタートアップ/MVP開発 | 仕様が固まっておらず、まずは早く形にしたい |
・小さく試して、早く修正できるか ・要件整理を一緒に考えてくれるか ・少人数でもスピーディに動けるか |
PM/BrSE+エンジニア数名の最小構成で開始し、 検証しながら必要に応じて体制を拡張。 ※ 日本語で相談しながら、開発はオフショアで進める形と相性が良い |
| SaaS/継続的な改善開発 | 機能追加が続き、運用負荷が増えていく |
・改善状況を数値で把握できるか ・ノウハウが属人化しないか ・将来の拡張を見据えているか |
開発だけでなく、テストや運用改善も含めて継続的に見直す。 ※ 月次で状況を振り返り、改善提案まで行う運用が効果的 |
| 大企業/DX推進 | セキュリティや社内手続きが多く、進行が遅れがち |
・監査やセキュリティに対応できるか ・説明資料やルールが整理されているか ・意思決定の流れが見えるか |
初期段階からルールや役割分担を明確にし、 日本側とオフショア拠点が連携して運用。 ※ 監査対応を見据えた体制づくりが重要 |
| 内製化を見据えた開発 | 人手不足で、将来的な引き継ぎが不安 |
・社内にノウハウが残るか ・開発ルールが統一されているか ・引き継ぎ前提で進められるか |
社内メンバーと混成チームで進め、 ドキュメントやレビューを標準化。 ※ 将来的な内製化を前提に活用する企業も増えている |
| レガシーシステム刷新 | 影響範囲が広く、失敗するとリスクが大きい |
・段階的に進められるか ・小さく試せるか ・品質を保てる仕組みがあるか |
対象を絞って少しずつ移行し、 早い段階でテストを整備。 ※ レガシー刷新やクラウド移行はラボ型と相性が良い |
すぐ判断できるチェックポイント
難しい理論よりも、以下の点を確認すると、 ラボ型開発が自社に合うかどうかを短時間で判断しやすくなります。
- 誰が最終判断するのか: 社内で判断役が不明確な場合、要件整理まで支援できるパートナーが重要。
- 最初の数か月の進め方が決まっているか: 立ち上がりの設計が明確なほど、成果が出るまでが早い。
- 日本語でやり取りできるか: 会議や資料を日本語で回せる体制は、認識ズレや手戻りを減らします。
補足: ラボ型開発では、人数や単価だけでなく、 日本語での意思決定支援や運用設計まで含めて任せられるかが重要です。 日本市場向けにラボ型開発を提供してきたカオピーズの体制や実績は、 その参考例の一つと言えるでしょう。
導入から運用までの進め方:失敗しにくいラボ型開発の進め方
ラボ型開発は、最初の準備でほぼ結果が決まります。 段取りを曖昧にしたまま始めると、 後から調整や修正が増え、コストも時間もかかりがちです。 小さく始めて、状況を早めに確認し、必要に応じて直していく―― この流れを意識することが成功の近道です。
導入の進め方(最初の90日間の考え方)
ラボ型開発でうまくいっているケースの多くは、 最初の約90日間で「体制・進め方・評価の基準」を一度整理しています。 いきなり完璧を目指すのではなく、 動かしながら形にしていくことがポイントです。
- 最初の1〜2週間: 目的とゴールを整理し、 まず何を試すのかを決めます。 併せて、必要な資料やツール、セキュリティの前提をすり合わせます。
- 3〜6週間: チームを立ち上げ、開発環境を整備。 小さな機能やサンプルを作りながら、進め方に慣れていきます。
- 7〜10週間: 定期的な開発サイクルを回し始め、 品質や進捗を確認する仕組みを動かします。
- 11〜12週間: ここまでの結果を振り返り、 体制や契約条件、今後の目標を見直します。
KPIの考え方(見やすく・偏らない指標)
コストやスケジュールだけを見ていると、 ラボ型開発の状態を正しく判断できません。 「ちゃんと進んでいるか」「品質は保てているか」 「チームが無理なく回っているか」を バランスよく確認することが大切です。
- 進み具合: 予定通り進んでいるか、どのくらいの頻度で成果が出ているか
- 品質: 不具合の多さや、修正のやり直しが発生していないか
- 流れ: 依頼してから対応されるまでに無駄な待ち時間がないか
- チームの状態: メンバーが無理なく働けているか、ノウハウがきちんと共有されているか
継続的に改善するためのコツ
ラボ型開発は、一度始めたら終わりではありません。 運用しながら少しずつ良くしていくことで、 長期的な成果につながります。
- 定期的に振り返りの場を設け、 出てきた改善点を次の開発で必ず試します。
- 「なぜその判断をしたのか」を残しておき、 後から見ても分かる状態にします。
- テストや運用作業を仕組み化し、 人に依存しすぎない形にします。
- 将来の引き継ぎや体制変更を見据え、 役割やノウハウをチーム全体で共有します。
- 契約終了やベンダ変更の可能性も考え、 成果物や権限の整理方法を事前に決めておきます。
実務で失敗しにくい進め方
初めてラボ型開発を導入する場合は、 いきなり大きな契約を結ぶよりも、 試しながら学ぶ進め方の方が安心です。
- まずは1〜3か月のトライアルで、 対象範囲・KPI・チームの相性を確認し、 問題なければ中長期契約へ移行します。
- 契約内容や品質基準、将来の体制変更時のルールを 事前に文書で整理しておくと安心です。
- ラボ型開発の立ち上げや運用に慣れていない場合は、 実績のあるベンダの進め方やテンプレートを活用するとスムーズです。 たとえば カオピーズのラボ型開発ページ では、体制例や導入プロセスが分かりやすく整理されています。
【2026年最新】ラボ型開発の最新トレンド:今までと何が変わったのか
2026年のラボ型開発では、「早く作れるか」だけでは判断できません。 セキュリティ、人材の確保、AIの使い方まで含めて、 開発の進め方そのものが大きく変わっています。 ベンダ選定や契約を考える際も、 これまでとは違う視点で確認することが重要になっています。
① AI活用は当たり前に:大切なのは「どう管理しているか」
- 生成AIは、プログラム作成やテストなどで広く使われるようになり、 開発スピードを上げる手段として定着しつつあります。
- 一方で、情報漏えいや著作権の問題を心配する声も増えています。 そのため、 AIを使っているかどうかよりも、どんなルールで使っているか が重視されるようになっています。
- AIの使用範囲、禁止事項、承認の流れなどを 実際の運用に落とし込めているかが、ベンダ選びのポイントです。
② 日本語で進行できる人材の重要性:やり取りの質が成果を左右する
- 日本語で要件整理や調整を行えるBrSEやPMは、今も不足しています。 この人材がいるかどうかで、 立ち上げの速さや最初の品質に大きな差が出ます。
- 「在籍しているか」だけでなく、 代わりの人材をすぐ用意できるか、 日本時間でしっかりコミュニケーションが取れるかまで 確認することが大切です。
③ セキュリティは“資格”より“実際の運用”を見る
- ISMSやISOを取得していることは、 もはや特別な強みではなく、前提条件になりつつあります。
- それ以上に重要なのは、 日々の開発や運用の中で、どのように安全性を保っているか を具体的に説明できるかどうかです。
- 特に大企業向けの案件では、 契約前にセキュリティに関する詳細な説明や資料提出を 求められるケースが増えています。
④ KPIの見方も変化:開発状況だけでなく「成果」を説明できるか
- 進捗やスピードだけでなく、 品質の安定性やトラブル対応の速さ、 さらにはユーザー満足度なども含めて説明することが求められています。
- レポートも、数字を並べるだけではなく、 「なぜそうなったのか」「次に何を改善するのか」まで セットで共有できる体制が評価されるようになっています。
2026年のラボ型開発は、 単に人を確保するモデルから一歩進み、 AIの使い方、セキュリティの考え方、成果の測り方まで含めて “運用力”を比較するフェーズに入っています。 価格や人数だけで判断せず、 実際の運用ルールや管理体制まで確認することが、 後悔しない選定につながります。
よくある質問(FAQ)
- Q1. ラボ型開発とは何ですか?請負型開発と何が違うのですか?
-
ラボ型開発とは、「成果物を一式で発注する」のではなく、 自社専用の開発チームを一定期間確保し、一緒に開発を進める契約形態です。
請負型開発では、最初に決めた仕様どおりの成果物を納品することがゴールになりますが、 ラボ型開発では、優先順位や内容を相談しながら、継続的に改善を進めていく点が大きな違いです。
要件が変わりやすいプロジェクトや、長期的に育てたいプロダクトに向いています。
- Q2. どのような企業・プロジェクトに向いていますか?
-
ラボ型開発は、要件がまだ固まっていない新規サービスや、 リリース後も改善を続けたいシステムに特に適しています。
専属チームがプロダクトを理解しながら開発するため、 仕様変更があっても手戻りが少なく、スピードと品質を両立しやすくなります。
まずは小さなチームで始め、事業の成長に合わせて人数や役割を増やす、といった進め方も可能です。
- Q3. 費用はどのように決まりますか?予算管理は難しくありませんか?
-
ラボ型開発の費用は、チーム人数・役割・契約期間をもとに月額で決まるのが一般的です。
成果物単位ではなくチーム単位の契約のため、 途中で優先順位を変えたり、スコープを調整したりしやすい点が特徴です。
実際には、最小構成でスタートし、進捗や成果を見ながら 数カ月単位で体制を見直すことで、無理のない予算管理が可能になります。
- Q4. 初めてでも失敗せずに導入できますか?サポートはありますか?
-
初めてラボ型開発を導入する場合は、 小規模なトライアルから始めることが成功のポイントです。
早い段階で、目的・進め方・役割分担・コミュニケーション方法を整理しておくことで、 「思っていたのと違う」というズレを防げます。
カオピーズでは、要件整理やPoC設計、チーム構成の検討から、 品質・セキュリティのルール作り、日本語対応まで含めて支援し、 スムーズな立ち上げをサポートしています。



