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RAG(検索拡張生成)とは|その概要とビジネス活用の可能性
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2024.12.20

RAG(検索拡張生成)とは|その概要とビジネス活用の可能性

RAG | Retrieval Augmented Generation は、企業内に蓄積された膨大な業務文書や外部情報を効果的に活用するための技術です。この記事では、RAGの基本的な仕組みやその活用事例について詳しく解説します。

まずは、RAGの基盤となる「LLM」について理解を深めていきましょう。

目次

LLMとは

 RAG |その概要とビジネス活用の可能性

大規模言語モデル(LLM:Large language Models)とは、人工知能の一種で、自然言語処理(NLP)と呼ばれる分野で使用されます。

膨大なデータセットとディープラーニング(深層学習)を基にトレーニングされ、何十億ものパラメータを駆使し、信頼性の高い知識源を相互に参照することで、さまざまなコンテキストにおいてユーザーの質問に適切に応答します。文章や単語の出現確率を用いてモデル化したものであり、人間のような自然な対話が可能で、要約や翻訳や文章作成といったの自然言語処理で用いられ、さまざまなタスクを実行できます。

しかし、LLMには解決すべき課題も存在しています。

LLMの使用課題

具体的には、LLMには以下のような問題点があります:

・質問に対する適切な回答がない場合でも、不正確な情報を提供してしまう

・ユーザーが求めている最新の情報に応じた回答ができず、古い情報や一般的な情報を提示してしまう

・信頼できないソースからの情報を基に回答を生成してしまう

・異なるトレーニングデータが同じ用語を異なる意味で使っているため、誤解を招くような不正確な回答が生じる

LLMの回答は学習済みデータに依存しており、学習データに含まれない情報については適切な回答を生成できません。これらの課題を持つLLMは、あたかも最新の情報を得ることなく全ての質問に自信満々で回答する熱心すぎる新入社員のようです。残念ながら、このような態度はユーザーの信頼を損なう原因となり、チャットボットには模倣してほしくない行動です。

※関連記事:チャットGPT|メリット・デメリットやリスクをカンタン解説

そのため、自社の業務特化型の課題に対応したい場合、LLM単体では限界があります。

RAG(検索拡張生成)とは

RAG(検索拡張生成)とは 

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、大規模言語モデル(LLM)を用いたテキスト生成において、外部情報を検索し組み合わせることで、より高精度な回答を実現する技術です。日本語では「検索拡張生成」や「取得拡張生成」といった表現で訳されることもあります。

検索拡張生成(RAG)は、LLMの能力を活用し、再トレーニングなしで特定の業界や組織の内部知識にアクセスできるようにします。応答生成の前にトレーニングデータ以外の信頼性の高い知識ベースを参照し、大規模な言語モデル(LLM)の出力をさらに最適化することが可能になります。

これにより、LLMの出力の関連性、正確性、実用性を維持しつつ、コスト効果の高い方法でさらに優れた成果を引き出すことができるのです。

RAGの導入事例

例えば、企業の社内規定やリアルタイムの情報(例:株価や市場動向)について質問しても、一般的なLLMでは正確な回答は期待できません。このようなニーズを解決するために登場したのがRAGです。RAGは、生成AIが社内や外部のデータに基づいて事実に基づいた回答を生成できるようにし、生成AIの課題である「ハルシネーション(事実に基づかない回答)」を軽減する効果もあります。

※関連記事:AIチャット | 無料サイトやアプリ作成方法を紹介【徹底解説】

検索拡張生成(RAG)の導入メリットは?

RAG(検索拡張生成)技術は、組織における生成AI(生成型人工知能)の導入と活用において、さまざまな優れた利点を提供します。以下では、その主な利点を詳しく見ていきましょう。

検索拡張生成(RAG)の導入メリットは?

コスト効率の良い実装

従来、生成AIシステムを開発するには、大規模な基盤モデル(FM)を使用して訓練を行い、特定の組織やドメインに特化した情報を得るために再トレーニングを行う必要がありました。これには高い計算リソースと費用がかかります。しかし、RAGは、新しいデータをLLM(大規模言語モデル)に導入するための、はるかにコスト効率の良いアプローチを提供します。この結果、生成AI技術はより手頃な価格で利用可能となり、多くの企業にとって導入しやすくなります。

常に最新の情報提供

LLMが元々学習したデータが有用であったとしても、時が経つにつれて情報は古くなります。RAGを活用することで、開発者は最新の研究結果や統計情報、さらにはニュースなどを生成モデルに反映させることができます。さらに、RAGを使用すれば、LLMをリアルタイムで更新される情報ソース(例:ソーシャルメディアフィードやニュースサイト)に接続し、常に新鮮な情報をユーザーに提供できるようになります。

※関連記事: AIシステム開発プロセスの概要と主要なポイントについて簡単なご紹介

ユーザーの信頼強化

RAGを導入すると、LLMは情報の出典を明示できるようになります。出力結果に対して引用や参考元を明示することで、ユーザーは生成された情報がどこから来ているのかを確認でき、より信頼性の高いコンテンツとして受け取ることができます。さらに、ユーザーはソースドキュメントを直接調べることも可能となり、より深い理解を得ることができます。これにより、生成AIに対する信頼性が大きく向上します。

開発者によるコントロール強化

RAGを使用することで、開発者はチャットボットやAIアプリケーションの開発過程をより細かくコントロールできるようになります。LLMが参照する情報源を管理し、変化するニーズや部門ごとの要件に合わせて適応させることが可能です。また、機密情報や特定の情報に対してアクセス権を設定し、適切な応答が得られるように調整することもできます。万が一、誤った情報源が参照された場合には、迅速に修正することができ、開発者は生成AIをより安心して運用できるようになります。

※関連記事:ヘルスケアにおける人工知能の可能性

RAGの仕組み

RAGの動作は主に以下の2つのフェーズに分けられます。

RAG 仕組み 

図1. RAGの仕組み

出典:大和総研

検索フェーズ

ユーザーの質問に対して関連性の高い外部データを検索し、情報を取得します

具体的には以下の手順で進みます:

① 質問の入力:ユーザーがRAGを利用するアプリケーションに質問を送信します

② 文書の検索:アプリケーションは社内データや外部情報から、質問に関連する文書を検索します

③ 文書の取得:検索結果から、関連性の高い文書を取得します

生成フェーズ

検索フェーズで取得した文書を基に、LLMがユーザーの質問に回答を生成します

④ 情報の送信:取得した文書の情報をLLMに送信し、質問の背景コンテキストとして活用します

⑤ 回答の生成:LLMが質問と文書情報を基に回答を生成します

⑥ 回答の提示:生成された回答をアプリケーションがユーザーに表示します

このプロセスを通じて、RAGは外部データを利用しつつ、LLMの汎用性を保ちながら信頼性の高い回答を提供します。

※関連記事:ディープラーニング についての簡単な説明・歴史・実用例

RAGのビジネス活用の可能性

本セクションでは、最新の技術革新が企業運営にどのように影響を与え、効率化を実現するかについて、RAG技術の実際の応用例を通じてご紹介します。

企業内での情報検索能力の強化

RAG(検索拡張生成)技術は、企業内での情報活用を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。大和総研が公開している社内情報検索LLMアプリケーションの事例を見てみましょう。

この応用は、従来のLLMだけでは難しい、社内情報を反映した正確な回答を生成しています。さらに、LLMが参照した文書とその該当部分が表示されるため、ユーザーは生成された回答の正確性を簡単に確認することができます。

RAGのビジネス活用の可能性・事例

図2. RAGを用いた事例

出典:大和総研

以上の事例では、社内規定が記載された文書を検索し、最も関連性の高い情報を基にLLMが回答を生成します。例えば、質問に対して最も関連するX規定の14ページを参照し、その情報を基に回答を作成します。さらに、回答を生成する際に直接参照した文書だけでなく、類似性が高い他の文書も順番に表示され、LLMの回答に不十分な点があれば、それらの文書を確認することができます。

カスタマーサポートへの応用

RAG技術を活用することで、企業内に蓄積されたあらゆる業務分野の知識を効率的に引き出し、活用できるようになります。

例えば、顧客からの問い合わせに対応するサポートデスクでは、FAQやマニュアルを外部情報として利用し、チャットボットやオペレーター支援ツールをRAG方式で開発することが可能です。これにより、従来オペレーターが手作業で情報を検索していた時間を大幅に短縮し、より迅速かつ正確な対応ができるようになります。

また、オペレーターの業務習熟度に関わらず、一定の品質で応答を提供することができ、顧客の問い合わせ待機時間の削減にも繋がります。このような効率化は、顧客満足度の向上にも直結し、企業のカスタマーエクスペリエンス向上に大きく貢献します。

※関連記事:AIはどのようにカスタマーエクスペリエンス戦略を改善できるのか?

他の業界への応用(金融、小売、医療、法務)

加えて、金融や小売業界ではリアルタイムで商品や在庫情報が更新されるシステムに、医療や法務業界では正確で根拠のある回答が求められるシーンにおいても、RAGの活用が進んでいます。これにより、大規模な言語モデルが日々の業務や複雑な問題解決においてさらに実用的なツールとなり、企業の競争力を強化することができます。

結論

RAG | 検索拡張生成技術は、企業の業務効率化と情報活用に革命をもたらす可能性を秘めています。金融、医療、法務など、正確で根拠のある情報が求められる分野にも応用が進んでおり、企業の競争力向上に寄与しています。

カオピーズでは、10年以上にわたる経験を持ち、150社を超える日本企業のクライアントを支援し、売上の拡大やビジネス課題の解決を図るために、数百のシステムを導入してまいりました。弊社は、先進的なソリューション、高速な開発、そして確かな品質を提供することに誇りを持っています。

貴社のニーズや目標に最適ソリューションの開発をどのようにサポートできるか、ぜひ私たちにご相談ください。

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