メタバース は現在、テクノロジーやビジネス、金融の世界で大きな流行語になっています。他の流行語と同様にその定義はあいまいで、論争の的であり、この言葉を使う人々の思惑によって形作られています。マーク・ザッカーバーグやサティア・ナデラのようなCEOは、メタバースはインターネットの未来像だと言っています。
目次
- メタバース とは?
- ビデオゲームがメタバースと結びつく理由とは?
- クリプトはメタバースにどう適合するのか?/a>
- メタバースでの仕事はどのようなものか?
- メタバース の例
- メタバースの未来はどうなるか?
- 終わりに
メタバース とは?
メタバースとは3Dのオンライン仮想空間であり、ユーザー達が生活のあらゆる場面でつながっているという概念です。インターネットでは1つのブラウザでさまざまなウェブサイトにアクセスできるのと同じように、メタバースでは複数のプラットフォームがつながっています。
この概念は、ニール・スティーヴンスンのSF(Science-Fiction)小説『スノウ・クラッシュ』の中で発展しました。しかし、メタバースというアイデアはかつてフィクションでしたが、今では将来的に現実のものとなりそうです。
メタバースは拡張現実(AR - Augmented Reality)によって動き、各ユーザーはキャラクターやアバターを操作することになります。例えば、Oculus VRヘッドセットを使って仮想オフィスで複合現実の会議を行い、ブロックチェーンベースのゲームの中で仕事を終えてリラックスし、仮想通貨ポートフォリオと資産をすべてメタバース内で管理できるのです。
既存の仮想ビデオゲームの世界では、すでにメタバースの側面が見られます。Second LifeやFortniteのようなゲームや、Gather.townのような社内コミュニケーションツールは、私たちの生活の要素をオンライン世界に集約しています。これらのアプリケーションはメタバースではありませんが、どこか似ています。それでも、メタバースはまだ存在していません。
メタバースはゲームやソーシャルメディアに対応しているだけではありません。経済やデジタルアイデンティティ、分散型ガバナンス、その他のアプリケーションを組み合わせることになるでしょう。現在でも、ユーザーが高価なアイテムや通貨を作成して所有することで、ひとつに統合したメタバースの発展が進んでいます。これらの特徴がすべて、ブロックチェーンがこの未来のテクノロジーを後押しする可能性を秘めています。
ビデオゲームがメタバースと結びつく理由とは?
ビデオゲームでは3Dの仮想現実が重視されているため、現在最もメタバースに近い体験ができます。これは、単に3Dだからというだけではありません。ビデオゲームは今、私たちの生活の他の場面と交差するサービスや機能を提供しています。ビデオゲーム「Roblox」では、コンサートやミートアップなどのバーチャルイベントまで開催されています。プレイヤーはもはやゲームをプレイするだけでなく、「サイバースペース」での他の活動や生活の一部にもゲームを利用しています。例えば、マルチプレイヤーゲーム「Fortnite」では、1,230万人のプレイヤーがトラヴィス・スコットのゲーム内でのバーチャル音楽ツアーに参加しました。
クリプトはメタバースにどう適合するのか?
ゲームで提供されるのはメタバースの3D的な側面ですが、生活の場面すべてを網羅できる仮想世界に必要なものすべてが得られるわけではありません。クリプトによって、所有権のデジタル証明、価値の譲渡、ガバナンス、アクセシビリティなど、必要な他の重要なものが得られます。しかし、これらが意味するのは具体的に何でしょうか?
将来、私たちがメタバースで仕事をし、交流し、さらには仮想アイテムを購入するとしたら、所有権を示すための安全な方法が必要です。また、こういったアイテムやお金をメタバース内で安全に譲渡しなければなりません。さらに、メタバースが私たちの生活の大きな部分を占めるようになれば、メタバースで行われる意思決定に関わりたいと思うようになるでしょう。
ビデオゲームには、すでに基本的なソリューションがいくつか取り入れられています。しかし多くの開発者は、さらに良い方法としてクリプトとブロックチェーンを代わりに使用しています。ビデオゲームの開発が中央集権的であるのに対し、ブロックチェーンでは、この問題を扱ううえで分散的で透明性の高い方法が利用できます。
ブロックチェーンの開発者もまた、ビデオゲームの世界から影響を受けています。分散型金融 (DeFi)やNFTゲーム(GameFi)ではゲーミフィケーションが一般的です。この2つの世界には十分な類似点があるので、今後さらに融合する可能性があるように思えます。メタバースに適したブロックチェーンの重要な点は、以下の通りです。
① 所有権のデジタル証明:自分の秘密鍵にアクセスできるウォレットを所有することで、ブロックチェーン上の活動や資産の所有権をすぐに証明できます。例えば、仕事中にブロックチェーン上の取引の正確な記録を見せ、説明責任を果たすことができます。ウォレットは、デジタルアイデンティティや所有権の証明を確立するための最も安全で確実な方法の1つです。
② デジタルコレクション性:誰が何を所有しているかを証明できるのと同様に、あるアイテムがオリジナルかつユニークであることを証明できます。より現実的な活動を取り入れようとするメタバースにとって、これは重要なことです。NFTを通じて、100%ユニークで、正確な複製や偽造ができないオブジェクトを作成できます。ブロックチェーンは物理的なアイテムの所有権も証明できます。
③ 価値の譲渡:メタバースでは、ユーザーが信頼できるような確実に価値を譲渡する方法が必要になります。マルチプレイヤーゲームにおけるゲーム内通貨は、ブロックチェーン上の仮想通貨よりも安全性が低いものです。ユーザーがメタバースで長い時間を過ごし、そこでお金まで稼ぐのであれば、信頼できる通貨が必要になります。
④ ガバナンス:メタバースと連携するためのルールをコントロールする能力もまた、ユーザーにとって重要であるべきです。現実世界では社内で投票権を持ち、リーダーや取締役を選出できます。メタバースでも公正なガバナンスを実施する方法が必要になりますが、ブロックチェーンはすでに実績がある方法なのです。
⑤ アクセシビリティ:世界中の誰もが、パブリックブロックチェーン上でウォレットを作成できます。銀行口座とは異なり、お金を払ったり詳細を明らかにしたりする必要がありません。そのため、資金やオンラインのデジタルアイデンティティを管理する最も利用しやすい方法のひとつとなっています。
⑥ 相互運用性:ブロックチェーン技術により、異なるプラットフォーム間の互換性は絶えず向上しています。ポルカドット(DOT)やアバランチ(AVAX)のようなプロジェクトでは、相互に連携できるカスタムブロックチェーンを作成できます。ひとつのメタバースでは複数のプロジェクトを結びつける必要がありますが、ブロックチェーン技術にはそのための解決法がすでにあります。
メタバースでの仕事はどのようなものか?
先述のように、メタバースでは生活のあらゆる場面がひとつの場所に集約されます。すでに多くの人が在宅で仕事をしていますが、メタバースでは3Dのオフィスに入り、同僚のアバターと交流できるようになります。仕事もメタバースに関連したものとなり、メタバース内で直接使える収入が得られるかもしれません。実は、この種の仕事は似たような形ですでに存在しています。
NFTゲームや「play-to-earn(プレイして稼げる)」モデルは現在、世界中の人々に安定した収入源をもたらしています。こういったオンライン上の仕事は将来的にメタバースへの導入に理想的な候補であり、人々が仮想世界での生活や収入に時間を費やす意思があることを証明しています。Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)やGods Unchained(ゴッズ・アンチェイン)のような「play-to-earn」ゲームには、3Dの世界やアバターすらありません。しかし、それが完全にオンラインの世界で稼ぐ方法として、メタバースの一部になり得るという原理です。
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メタバース の例
ひとつの連結したメタバースはまだ存在しませんが、メタバースに似たプラットフォームやプロジェクトはたくさんあります。一般的に、これらはNFTやその他のブロックチェーン要素も取り入れています。では、3つの例を見てみましょう。
・SecondLive(セカンドライブ)
SecondLiveは、ユーザーがアバターを操作して交流や学習、ビジネスを行う3D仮想環境です。また、コレクターズアイテムを交換するためのNFTマーケットプレイスもあります。2020年9月、SecondLiveは1周年記念の一環として、バイナンススマートチェーン(BSC)の収穫祭を開催しました。バーチャル展示会では、BSCエコシステムのさまざまなプロジェクトが紹介され、ユーザーは探索や交流することができました。
・Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)
Axie Infinityは「play-to-earn」ゲームであり、発展途上国のプレイヤーに安定した収入を得る機会をもたらしています。プレイヤーは「アクシー」と呼ばれる3体の生物を購入するかもらうことで、「Smooth Love Potion(SLP)」トークンを増やすことができます。オープンマーケットで売れば、プレイ量や市場価格にもよりますが、およそ200〜1,000ドル(約2万6千〜13万円)を稼ぐことができます。
Axie Infinityでは唯一の3Dキャラクターやアバターをもらえるわけではありませんが、ユーザーはメタバース的な仕事をする機会を持てます。すでに聞いたことがあるかもしれませんが、フィリピン人が常勤雇用や生活保護の代わりとして利用しているというのは有名な話です。
Decentraland(ディセントラランド)
Decentralandは、仮想通貨やNFT、仮想不動産をソーシャルな要素と組み合わせたオンラインのデジタル世界です。その上、プレイヤーはプラットフォームのガバナンスに積極的な関わりを持ちます。他のブロックチェーンゲームと同様、化粧品のコレクションを表すためにNFTが使われています。仮想通貨「MANA」を使ってゲーム内で16×16メートルの土地区画「LAND」を購入する際にもNFTが使用されています。これらすべての組み合わせにより、複雑な仮想通貨経済が形成されているのです。
メタバースの未来はどうなるか?
Facebookは、統合したメタバースを作るうえで最も大きな発言力を持つ企業のひとつです。このことによって、仮想通貨で動くメタバースが特に興味深くなっています。その理由としてFacebookのステーブルコインプロジェクト「Diem(ディエム)」があります。マーク・ザッカーバーグ氏は、メタバースプロジェクトを利用してリモートワークを支援し、発展途上国の人々の経済的な機会を向上させる計画について明言しています。Facebookはソーシャルメディア、コミュニケーション、仮想通貨プラットフォームを所有しているので、これらすべての世界をひとつに統合するうえで好スタートを切っています。MicrosoftやApple、Googleなど他の大手IT企業もメタバースの創造を目指しています。
仮想通貨で動くメタバースに関して言うと、NFTのマーケットプレイスと3D仮想世界のさらなる統合が次のステップと思われます。NFTの保有者はすでにOpenSeaやBakerySwapなどのマーケットプレイスでの複数のルートから商品を販売できますが、それに向けた共通の3Dプラットフォームはまだ存在しません。より大きなスケールでは、ブロックチェーンの開発者は、主要なIT企業ではなくオーガニックユーザーが多い人気のメタバース的アプリケーションを開発するかもしれません。
終わりに
ひとつの統合されたメタバースはまだ先の話のように思われますが、その誕生につながる可能性がある展開はすでに見えています。それはブロックチェーン技術と仮想通貨のSF的なユースケースのひとつになりそうです。私たちが本当にメタバースに到達するかどうかは不明です。しかし、その間にも私たちはすでにメタバースのようなプロジェクトを体験でき、ブロックチェーンを日常生活にさらに取り入れ続けることができるのです。