BFSIと銀行システム|安心安全を支えるシステム-DX時代における対応とあり方
「金融DXの時代に、銀行システムはどうあるべきか?」
2023年10月10日、内国為替取引システム「全国銀行データ通信システム(以下:全銀システム)」に障害が発生し、3日後12日午前中に正常化するまで、取引が停滞する事態に陥りました。これは全銀システムが稼働してから50年以降はじめてのことでした。
同年12月18日、全銀システム障害が金融業界の信頼を根本から揺るがす重大な事態だと見た金融庁は、運営法人である「全国銀行資金決済ネットワーク」に対し、資金決済法第80条第1項にもとづく報告懲求命令を下しました。
ここで筆者が取り上げる側面は「それが10年、20年先のトレンドを見据えてシステム整備を行わなければいけない全銀ネットと、そのスポンサーである金融機関の思惑との違いの板挟みの中で全銀システムの更新は進んでいる」という点です。(※引用元は本章末)
金融DX時代に応じ、銀行システムを含むBFSI(Banking, financial services and insurance: 銀行 、金融 サービス、保険)業界はいま、新しい対応や将来のあり方を明確にすべきだと考えられます。トピックの難しさを認めつつ、この記事は将来的にBFSI業界が歩むべき道を論じる端緒となります。
※引用元:「全銀システム障害」とは何だったのか 解明まで時間がかかった理由と、待ち構える“茨の道”とは(第4部最終段落)
目次
BFSIとは?銀行システムとは?
BFSIとは、銀行・金融サービス・保険を取り巻く業界を包括的に指します。BFSIに使用されるシステムは、内国為替取引を行う銀行システムのように、BFSIおよび金融DX推進を支えるツールと捉えることができます。この章では、BSFIと銀行システムについて簡潔に概説します。
BFSIとは?
BFSIは2000年以降に急速な進化を遂げ、その多くはデータベース・テクノロジーの進歩に大きく依存してきました。同時に、フィンテック技術を刷新する絶好の機会となり、DX時代におけるBFSI業界とベースのシステムが、どのように変化していくのかという議論も喚起する結果となりました。
BFSI業界システムの導入は金融DX推進において非常に重要です。
たとえば、リスク低減アプローチ、イノベーション促進、新規市場への参入迅速化など、数多くのメリットをもたらすと言えます。具体的には、セキュリティ管理の簡素化やワークフロー最適化といった業務効率化、あるいは顧客体験向上のための客観的な戦略立案など、多種多様な対策が、より効果的になることが見込まれます。
銀行システムとは?
銀行システムは、金融の法律や規制・規則に基づき構成されるシステムのことを指し、経済の中心的な役割を果たします。主な機能は、貯蓄から投資への資金の移動を助け、リスクを分散させ、情報を提供し、取引を簡素化することです。
まず、銀行は金融市場で貯金や投資を扱います。そこに介在する法律や規制・規則は、公正と透明性の確保、消費者保護の保証、行く末は経済全体の安定維持のために設けられています。
金融DX時代のBFSIのあり方
この章では、DX時代のBFSI業界のあり方について見ます。
紙幅の関係で多種多様なBFSI業界全体を俯瞰して検討することは難しいので、銀行システムの変遷の歴史にフォーカスして、銀行システムの現状と直面課題を明確にします。そこから、BFSI業界のあり方について考える流れになります。
銀行システムの変遷
1965年、当時の「パンチカード」に代わり、旧三井銀行(現:三井住友銀行)で国内初の普通預金オンラインシステムが稼働開始しました。元帳更新が数十秒で完了し、業務効率が向上しました。
1970年代前半になると、金融機関相互ネットワーク構築が始まりました。複数の契約情報を結び付け、顧客情報を一元管理できる「総合オンラインシステム」が構築されました。同時に、振込・引落データを磁気テープで取引先から提供してもらい、処理終了後に結果を返す振込・引落の一括処理の開始があります。このときから、銀行利用者の利便性が向上しました。
以後、1990年代前半まで金融自由化に伴う新商品の相次ぐ開発や、地方銀行のサービス時間の延長などをはじめとする、システムに対する要求が厳しさを増しました。そのため、ITの技術革新に追いつくべく、多くの銀行では、システムの仕組みを抜本的に見直し、柔軟性や拡張性を備えた新規システムを構築しました。
1990年代後半から2000年代後半にかけ、さまざまな銀行で金融サービスがインターネットで利用可能になっていきました。最終的には、投資信託の購入や外貨預金取引などもできるまで発展し、銀行に行かなくても、ほぼすべての取引ができるようになりました。そして、次第にハードウェア及びソフトウェアの初期費用の軽減と開発サイクルの短縮を目的に、従来のメインフレームからオープン系システムへと移行していきました。
すなわち、銀行業界はサービス向上や業務効率化を図り、その時その時の新技術を取り入れて金融システムの進化と共に遂げてきたのです。
デジタル化の進行により、オンラインバンキング、モバイルバンキング、AIを活用した顧客サービスなど、新たなサービスが次々と提供されてきました。また、セキュリティ対策も強化され、透明性と効率性を求める現代社会のニーズに応えるため、テクノロジーを活用してサービスを改善し、顧客体験を向上させる努力が必要だからです。ただ、いままでは、銀行システムは、安定性の観点からオンプレミス環境で構築され、変化には個々のサブシステムで対応がなされてきました。
しかし、銀行は、時代に応じた要請や課題に応じて、次世代の金融システムを実現し、より高度なサービスを提供するべきと見られます。特に、セキュリティの強化、データの取扱い、規制への対応、システムのアップデートなど挙げられます。
これらの課題は、銀行ビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、最新のテクノロジーの導入やシステムのアップデート、規制への対応、行員の教育・トレーニングの実施が必須となるでしょう。すなわち、規制改革や新たな金融規制の動向を常に把握し、それに合致したシステム構築が求められます。
BFSI業界の今後の課題
前節の銀行システムの概観からBFSI業界の課題について、以下の3つの点のような課題を見出すことができます。
- 安心して利用できること:セキュリティ管理による安全性・堅牢性・不変性を規模の拡大、取扱情報量の増減、またはあらゆる規制変更など、条件や環境が変化しても必ず維持しないといけない
- ニーズに対応するサービス構築を心掛けること:金融DX時代においては、BFSI業界のサービスは「柔軟にチャネルや業務の追加ができるような再利用性の高いサービス」へと進化させる必要がある
- 新技術の導入によるシステム管理の効率化を常時欠かさないこと:レガシーシステムを使い続けることは今後の業界の変化に対応する力が失われていくので、常に改新が簡単に行える環境づくりのためにもシステムの柔軟性は保つひつようがある
金融DXとBFSIのあり方
前節で述べた3つの課題から、BFSIのあり方について、3つの要点を挙げ、それぞれについて説明します。
外部サービスとの連携性の向上
データの取扱いに高度なデータ分析やAIを活用することで、より効率的で安全なデータ管理を実現することが可能です。近年、銀行ではオープンAPIを用いて、外部企業との協業や、銀行機能・データの開放による新たな収益源を確保する事例が増加しています。外部システムと連携するシステムレイヤにAPIゲートウェイを構築し、銀行機能・データをAPI化することで、既存アプリケーションの構造を大きく変更することなく、外部企業や消費者に、APIを通じて銀行機能や銀行内の価値あるデータを公開することが可能になります。これにより銀行は、外部企業との広汎なエコシステム形成できます。
ビジネス環境の変化への対応
金融DX時代においては、BFSI業界システムを「柔軟にチャネルや業務の追加ができるような再利用性の高いサービス」へと進化させる必要があります。
たとえば、既存のアプリケーションにマイクロサービスを採用したモダナイゼーションに取り入れて、俊敏性や柔軟性をより高めたアプリケーションの再構築が可能になります。これにより銀行は、新たなサービスや事業を迅速に立ち上げられます。
クラウドによる柔軟なスケール
クラウドは、近年セキュリティ技術が向上し、銀行においてもシステム構築手段のひとつとなっています。取引量の増大に対してオンプレミス環境でシステムリソースを事前に増強する場合、多額のシステム構築費用と時間が必要です。
クラウドを利用することにより、銀行は、システムリソースをオンデマンドで調達でき、顧客にサービス提供されるまでに必要なコストや時間を削減できます。
オフショア開発も可能です
オフショア開発でもシステム開発は可能です。オフショア企業による金融システム開発では、技術力とコスト効率の高さが評価されています。
前述の通り、金融システムには、 顧客の口座管理、取引処理、リスク管理、オンラインバンキング、 決済システム、資産管理などの機能が含まれます。高いセキュリティ基準を満たす必要がありますが、近年のオフショア開発企業が集積する国々は技術集積が進行し、要件を満たす技術レベルを有する企業も増加していると見られます。
※参照:金融システムのオフショア開発(外部:Tech vie)
この記事のまとめ
BFSI関連システムは、わたしたちが安心して利用できる金融サービス提供のために欠かせないものです。DX時代のいま、その在り方も新たにすべきことを物語っています。またこのトピックは、常に継続して議論されるべきだと、この場を借りて強調いたします。
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