現代の医療現場では、効率化や患者サービスの向上を目的として、医療システムの導入が欠かせません。しかし、一口に「医療システム」といっても、その導入方法や開発プロセスにはさまざまな選択肢があり、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
この記事では、医療システム開発の具体的な方法や、導入による効果、さらにはプロセス全体について詳しく解説します。これから医療システムの導入を検討している方にとって、判断の助けとなる情報を提供しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
医療システムとは?医療システムの種類は何ですか?
医療システムは、医療機関の業務を効率化し、患者に質の高い医療サービスを提供するために欠かせないツールです。代表的な医療情報システムの種類は6種あります。
・電子カルテ:医師や看護師が患者情報を迅速かつ正確に記録し、共有できるようにするため、従来の紙カルテをデジタル化したシステム
・オーダリングシステム:医師が診療や検査、薬剤の処方などの指示を電子的に入力し、他部門に指示を伝達するシステム
・レセプトコンピュータシステム:診療報酬請求書(レセプト)の作成や管理を効率化するためのシステム
・PACS(医療用画像管理システム):医療用画像(X線、CT、MRIなど)をデジタルデータとして管理・共有するシステム
・検査システム :血液検査や尿検査など、各種検査データを管理し、結果を迅速に共有するためのシステム
・ 調剤システム:薬剤師が処方箋に基づいて調剤業務を効率化するためのシステム
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医療システムの導入・開発方法とは
医療システムの導入や開発は、医療機関が効率的な業務運営を実現し、患者へのサービス向上を目指す上で重要なプロセスです。この方法は、大きく分けて パッケージシステム と スクラッチ開発の2種類に分類されます。それぞれの方法には、導入目的や規模、コストに応じたメリットとデメリットがあり、医療機関のニーズに合った選択が求められます。
以下には、それぞれの方法の特徴について、詳しく見ていきます。
パッケージシステム
パッケージシステムは、提供会社が既に開発/a>した機能が搭載された既成システムを利用する方法です。このシステムは導入が迅速で、コストを抑えられる一方で、柔軟性には限りがあります。
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パッケージシステムの導入メリット
・導入期間を短縮できる:既に完成したシステムをそのまま導入するため、通常数週間から数カ月で運用を開始できます。このため、新規開業や急な運用改善を求める場合には非常に有効です。
・初期費用を抑えられる:パッケージシステムは月額制が一般的で、初期は大規模な予算を準備できない中小規模の医療機関にとって適した選択肢となります。数十万円程度から導入を始められるケースも多く見られます。 しかし、システム導入後に発生するコストはコントロールできないため、予算を決定する際には注意を払う必要があります。
・運用の安定性:運用の安定性も魅力の一つです。長期間運用されている実績のあるシステムは、動作が安定しており、トラブルが少ない傾向があります。他の医療機関での導入事例が豊富である場合、安心して使用できます。
パッケージシステムの導入デメリット
・カスタマイズ性が低い:提供されている機能はあらかじめ固定されており、医療機関独自の業務フローに完全には適応しない場合があります。機能の追加や変更が必要な場合、別のシステムを新たに導入するか、高額なカスタマイズ費用がかかることがあります。
・既存システムとの連携:パッケージシステムの導入する際には、他のシステムとの連携が制限される可能性があります。医療機関独自の既存システムや機器と互換性が低い場合、統合を進めるには追加開発やカスタマイズが必要になることがあります。特に古い設備や特殊な運用がある場合には、これが課題となりやすいです。
パッケージシステムは、短期間で運用を開始したい場合や、初期費用を抑えたい場合に最適な選択肢です。また、標準的な業務フローに対応する機能が備わっていれば十分と考える中小規模の医療機関に適しています。特に独自機能が必要ない場合や、一般的な診療業務を効率化する目的には、パッケージシステムが向いています。
スクラッチ開発
スクラッチ開発は、医療機関のニーズに応じてゼロからシステムを設計・構築する方法です。この方法は完全にオーダーメイドのシステムを提供するため、自由度が非常に高いのが特徴です。
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スクラッチ開発のメリット
・ニーズに応じて設計できる:医療機関独自の要望に応じて設計可能であり、個々の業務フローや課題に合わせた柔軟な機能を実装できます。たとえば、特定の診療科向けの特殊なレポート作成機能や、患者情報の特定の形式での管理など、細かなニーズに対応可能です。
・競争優位性を高める:独自性のあるシステムを構築することで、他の医療機関との差別化を図ることができます。独自の機能を搭載することで、患者により質の高いサービスを提供できる環境を作れます。
・スケーラビリティ: 導入後の成長や規模拡大を視野に入れて設計されるため、システムの拡張性が高く、運用開始後でも新しい機能の追加や運用状況に応じて既存機能の改良が容易に行えます。これにより、医療機関の長期的な発展(規模拡大や新しい診療科の導入)にも対応しやすくなります。
・他のシステムとの連携:他のシステムとの連携も自由に設計できるため、統合された効率的な業務運用が可能となります。
スクラッチ開発のデメリット
・初期費用が高い傾向がある:初期費用が高額になりやすいことが最大のデメリットです。一からシステムを設計・開発するため、費用が数百万円に及ぶことも少なくありません。特に大規模な医療機関向けのシステムでは、この傾向が顕著です。
・即時運用ができない:導入までに時間がかかる点も課題となります。システムの要件定義、設計、開発、テストに至るまで多くのプロセスが必要であるため、通常は1~2カ月から1年以上を要します。即時運用を求める場合には適していません。
スクラッチ開発は、独自の機能や高度なカスタマイズが必要な大規模医療機関に適しています。また、長期的な投資を前提とし、柔軟な運用やシステム拡張を求める場合にもスクラッチ開発が最適です。医療機関特有の課題や規模拡大を見越したシステム設計を必要とする場合、この方法が有力な選択肢となります。
医療システム導入のプロセス
パッケージシステムの導入の流れ
パッケージシステムの導入では、まず以下のような運用検討を行います:
・システムの範囲を決定:システムがどの範囲をカバーするかを明確にします。
・接続する他システムの確認:既存のシステムとの連携を検討。
・運用案の策定:問題点を洗い出し、運用計画を立案。
・基本設計の作成と承認:設計に基づく運用が適切かを確認。
設計段階でのミスは、最終的なシステムの欠陥につながる可能性があります。そのため、事前の設計と検討を徹底することが重要です。
・運用に関する詳細な打ち合わせ
設計が完了した後、ヒアリングシートを使用して要件を満たしているか確認します。次に、システム構築の流れを明確化します。構築の過程が不透明だと、開発の質にバラつきが生じるリスクがあります。
・システム環境の構築
これまでの検討をもとに、システム開発を開始します。設計内容を現場のエンジニアに正確に伝えることが成功の鍵です。
・運用テストと研修
完成したシステムは、現場での運用テストを行います。問題がなければ、研修を通じてシステムの運用方法を学びます。パッケージシステムの研修は個別対応が難しいため、動画やマニュアルの活用が推奨されます。
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スクラッチ開発の場合の医療システム導入の流れ
・要件定義
スクラッチ開発もパッケージ型と同様に、要件定義から始めます。利用者の希望を伝えつつ、現実的な範囲で要件を具体化します。
・設計
要件定義を基に、設計書を作成します。エンジニアが設計内容を正確に理解できるような設計が必要です。
・開発
設計が完了次第、開発を進めます。開発の進捗確認を怠らないことで、仕様に沿ったシステムの完成が期待できます。
・テスト
完成したシステムを部分ごとにテストし、次にシステム全体を検証します。現場での運用テストも行い、問題がないか確認を行います。
・導入後のサポート
システム導入後のサポートは、セキュリティ対策、教育や継続的なトレーニング、個人情報の保護のサポートが重視されます。スクラッチ開発の場合はシステム開発会社によって対応が異なるため、サポート内容をよく確認した上で、どのような形でシステムを依頼するかを決定することが大切です。
「病院独自のシステムを導入したい」や「適宜カスタマイズしたい」という場合に向けて、スクラッチ開発を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
結論
カオピーズでは、10年以上にわたる経験を持ち、150社を超える日本企業のクライアントを支援し、売上の拡大やビジネス課題の解決を図るために、数百のシステムを導入してまいりました。弊社は、先進的なソリューション、高速な開発、そして確かな品質を提供することに誇りを持っています。
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