異常検知システム|悲惨な事故を防ぐソリューション
この記事では、建設業界の課題を解決するDXソリューションの一端の事例として、異常を自動点検できる「異常検知システム」を取り扱います。記事の概要としては、異常検知システム導入と自動点検がもたらすメリットや抑えるべき注意点を中心に説明します。
目次
異常検知システムとは?
「異常検知システム」とは、AIやセンサーなどの活用により、機械や設備の異常を自動的に検知するシステムです。設備やシステムに取り付けた各種センサーで情報収集、そして、データベースにしたうえで、それに基づき自動分析を行い異常を検知します。
異常検知システムを自動点検に応用する価値は、建設物の崩壊・崩落事故防止の観点からも、建設業界の将来的な見通しの観点からも、自ずと明らかになります。
悲惨な事故と建設業界の課題
2012年12月2日、午前8時03分、山梨県の中央自動車道上り大月JCTと勝沼IC間にある笹子トンネルの天井板が138mにわたり崩落する事故がありました。その事故で、9名もの尊い命が失われたほか、数多くの方々が甚大な被害に遭われました。
この悲惨な笹子トンネル天井板崩落事故は、発生直後に数多くのニュースで取り上げられ、日本全国、建設業界だけでなく一般社会にも衝撃を与えました。
国土交通省は事故を受けて「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」を設置し、原因究明や再発防止対策に取り組みました。
後に委員会から公表された『トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会 報告書』(本章末にリンク) の冒頭では、この事故が「道路構造物そのものが通常の供用状態下において落下し、死亡者・負傷者が生じた我が国において例を見ない重大な事故」と位置づけられました (註 1.)。そして、設計、資材、施工はさることながら、点検と整備の不徹底も含め様々な問題点が指摘されました (註 2.)。
この悲惨な事故の再発防止策に関連して「各種情報の共有・継承の重要性が上げられる」という見解が示されています (註 3.)。この見解は、施工から管理までの情報共有と点検技術や経験値の共有を徹底して、保全整備の質を維持するべきだと理解することができます。
しかし、調査・検討委員会が提示した上記の見解とは裏腹に、近年の日本の建設業界では建設技術者の高齢化、離職、若手人材の減少が原因でリソースが不足し、状況は悪化しています。これは「共有・継承」自体が困難になっていると言えます。また、今後、同じような崩落事故が起こる可能性が高くなることを暗示しています。
そのような建設業界の課題を解決する方策の一端に「異常検知システム」があると考えることができます。
*引用元:『トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会 報告書』 (トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会)
*註
- 報告書内 冒頭「はじめに」
- 報告書内 p.37「4.2 事故発生要因の整理」
- 報告書内 p.45「まとめ」
メリット-異常検知システムがもたらす業界へのソリューション
国土交通省は建設DX 「i-Construction(アイ・コンストラクション)」を掲げて、という調査・測量・設計・施工・維持管理まで、全てのプロセスにICT技術・ IoT・人工知能(AI)・三次元データの活用などの革新的な技術を利用して生産性向上を図り、建設業界の変革を行っています。異常検知システムも、その建設DXの実現に寄与するものと考えられます。その理由は、以下に示す3つの理由があるためです。
※関連記事:i-construction (国土交通省ウェブサイト)
作業効率の向上と労務軽減
異常検知システムは、サーモグラフィーや音・衝撃センサー、 Syslogなどデジタルデータ、カメラ画像・映像データなど様々なデータをAIを使い自動分析し、異常がないかを自動で検知します。この作業は、かつてアナログで従業員が目視など直接行っていた作業であり、それが自動化されるため、作業効率の向上と労務軽減につながります。
※開発事例:建物自動点検システムのAWSインフラ構築
非属人化−個人の経験や間に頼らず検知ができる
自動化は人的リソースに頼らない業務効率化を実現するので、非属人化にも貢献します。従来、現場における異常検知は、熟練した技術者の経験や勘に頼るところも多く、ヒューマンエラーによる作業の抜けもれや人的ミスにより、どうしても検査が不安定になりがちです。また検査における工程が複雑化することで、作業者の負荷やリスクが大きくなるといった、生産性の低下に直結する課題も挙げられます。異常検知システムによる業務効率化は技術が共有され、生産性を向上させるソリューションとだと認識することができます。
システムによるデータベース化・自動分析による管理の簡素化
異常検知システムが収集したデータはデジタルデータベースに保存管理され、そのアーカイブされたデータはAI自動分析に用いられます。すなわち、従業員によるデータ管理や分析を自動化させるため、検知レベルの向上と同時に、管理タスク自体が簡素化され、時間やコスト削減、それに基づく業務効率化と働き方改革を実現することがでるようになります。
導入への注意点
異常検知システムのメリットは非常に価値があると判断できます。ところが、導入にトラブルがないわけではなく、注意すべき点はいくつか存在します。ここでは、その代表的なものを3点説明します。
コスト面の検討
異常検知システム導入には、導入コストがかかります。他にも、利用コスト、保全整備コスト、アップデートコストも検討に入れるべきです。慎重に検討し、投資利益率など客観的な判断材料を用意してディスカッションする必要があります。
技術習得の負担
導入に際して、建設DXで求められる技術、異常検知システムを使用できる技術やシステム運用に付随する技術を習得しなくてはいけません。たとえば、広大な敷地に異常検知システムを搭載したドローンを使用するケースを考えれば、異常検知システムだけでなく、ドローンを正確に操縦する技術も必要になります。
このことは、建設技術者が高齢化している側面も考慮すれば、それは看過できない課題になることすら想定できます。導入に際して技術的習得時間などを計画に盛り込むこと、技術者の理解を得る時間を設けることなど、対策には注意が必要です。
単純なデジタイゼーションでは根本的解決にならない
冒頭から一貫して提示している通り、異常検知システム導入は建設DXの一端であり、それは単一の作業をデジタル化するでデジタイゼーション、業務フローをデジタル化するでデジタライゼーションにとどまるものではありません。
たとえば、異常検知システムを導入しても、データ分析がアナログのままでは導入の意義は薄いままです。異常検知システムを導入して技術の非属人化、習得コストの削減、かつ検知作業の正確性を向上し、安全で働きやすい現場に事故を起こしにくい建設物を社会に提供できてこそ、システム導入の意義が深まります。
このように、システム導入が働き方改革や業界の成長のみならず、新しい価値を生み出すという意識を念頭に置いて導入すべきです。
オフショア開発ソリューションという選択
オフショア開発とは、国外の企業で、経験が深いIT人材を有し、ソフトウェアやアプリなどの開発を提供するIT企業に委託するオフショア開発の形の一つです。委託の目的は主にソフトウェア開発であるため、ITオフショア開発と呼ばれることもあります。
オフショア開発は、新興国企業が請け負うことが主体で、日本より低価格で開発ができる魅力をもとに活発になった背景があります。
ところが、近年は新興国オフショア開発企業において技術集積が進み、日本で可能なレベルの開発案件も受注するケースが目立つようになりました。たとえば、ベトナムはインドや中国に続いてオフショア開発が活発になった国ですが、オンプレミスのスクラッチ開発はさることながら、iOS開発、AI研究開発、AWSコンサルティングなど、取扱い可能な案件の種類は増加しています。
そのため、セキュリティや案件の要件など諸条件が揃うことが前提ですが、日本国内のIT企業だけでなく、海外のIT企業にオフショア開発を依頼することも、現在では一般的に検討に値する事項となっています。
※関連記事:オフショア開発|意味・メリット・成功させるポイント【必見】
まとめ
インフラの崩落・崩壊事故の防止は、人命に関わるため、最重視されなければいけません。しかし、日本国内の建設業界の現状と見通しを考慮すれば、人的リソース依存の従来のやり方を用維持、管理、保全、整備はますます難しくなると考えられます。建設DXは、業界の常識を変えてイノベーションを継続する必須項目です。今回は、その一端として「異常検知システム」による自動点検システムを紹介しました。
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