アジャイル開発とは、要件定義から設計・開発・テストという工程を短い期間で繰り返しながら進めていく開発手法です。仕様変更や市場の変化に柔軟に対応できるため、手戻りの削減やリリースまでのスピード向上につながります。本記事では、アジャイル開発の基礎知識から代表的な手法、失敗する原因と対策までを解説し、開発プロジェクトの体制を検討している事業部長やプロジェクトマネージャーが、自社の案件に適した進め方を判断できるように説明します。
アジャイル開発とは?
アジャイル開発とは、要件定義・設計・開発・テストという一連の工程を短い期間で繰り返しながら、システムやソフトウェアを段階的に完成させていく開発手法です。
従来型の開発手法とは異なり、最初にすべての仕様を確定させるのではなく、小さな単位で開発とレビューを繰り返す点に特徴があります。この短い開発サイクルは「イテレーション」または「スプリント」と呼ばれ、通常1〜4週間程度で区切られます。1つのイテレーションの中で計画・設計・実装・テストのすべての工程を完結させ、早い段階から動作するソフトウェアを生み出し、その都度フィードバックを反映させながら完成度を高めていきます。
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公表した『DX動向2025』(2025年)でも、DXを実現するための技術利活用の一つとして、日本企業における短期反復型の開発の活用状況が主要な調査項目に位置づけられています。このように、変化への対応力が重視されるなかで、開発途中の仕様変更や市場環境の変化を取り込みながら段階的に完成度を高められることは、アジャイル開発が持つ重要な価値です。
図1: 短いサイクルで開発を進める基本プロセス
アジャイル開発モデルでできること
アジャイル開発モデルでは、短い開発サイクルを活用して、プロジェクトの中で次のような実務に対応しやすくなります。
- 優先度の高い機能から順に開発する — すべての機能を一度に作るのではなく、必要性の高い機能から着手する
- 動く画面や機能を早い段階で確認する — 仕様書だけでなく、実際の操作感を見ながら認識を合わせる
- 利用部門や顧客からのフィードバックを次の開発に反映する — レビュー結果をもとに、機能やUIを段階的に改善する
- 仕様変更や追加要望を開発計画に組み込む — 各スプリントの計画時に優先順位を見直し、対応範囲を調整する
- 小さくリリースしながら改善を続ける — MVPや部分リリースを通じて、実運用に近い形で検証する
アジャイル開発とウォーターフォール開発の比較
アジャイル開発を理解するうえで欠かせないのが、従来型の開発手法であるウォーターフォール開発との違いです。両者は工程の進め方や仕様変更への対応力において、根本的に異なるアプローチを採用しています。以下では、それぞれの特徴を整理したうえで、比較表を用いて両手法の違いを具体的に確認します。
ウォーターフォール開発とは
ウォーターフォール開発とは、要件定義・設計・開発・テスト・リリースという工程を、上流から下流へ順番に一度だけ実施していく開発手法です。前工程が完了してから次工程に進む構造のため、進捗管理がしやすく、大規模なシステム開発において長年採用されてきました。一方で、開発の途中段階で仕様変更が発生した場合、前工程に戻って修正する必要があり、手戻りのコストが大きくなりやすいという課題があります。
比較表:進め方・柔軟性・向いている規模
短期反復型の開発とウォーターフォール開発は、進め方だけでなく、柔軟性や適した案件規模の面でも異なる特徴を持っています。両手法の違いを、以下の表に整理しました。
| 比較項目 | 短期反復型の開発 | ウォーターフォール開発 |
|---|---|---|
| 進め方 | 短いサイクル(イテレーション)を繰り返す | 工程を上流から下流へ順番に一度だけ実施 |
| 仕様変更への柔軟性 | 高い(各サイクルで見直し可能) | 低い(前工程への手戻りが発生しやすい) |
| 進捗の可視化 | 動くソフトウェアで都度確認できる | ドキュメントベースで工程完了ごとに確認 |
| 向いている規模・案件 | 仕様が流動的な案件、中小規模〜段階的な大規模案件 | 仕様が確定している案件、大規模・長期のシステム開発 |
| 発注者の関与 | 各サイクルで継続的な関与が必要 | 要件定義時に集中、以降は関与が少なめ |
表1: 短期反復型の開発とウォーターフォール開発の比較
この比較からわかるように、本手法は仕様変更への柔軟性に優れる一方、発注者側にも継続的な関与が求められます。どちらの手法が適しているかは、プロジェクトの規模や仕様の確定度合いによって異なります。この判断ポイントについては、後述の「向いているケース・向いていないケース」で詳しく解説します。
アジャイル開発のメリット
主なメリットは、以下の4点に整理されます。
- 仕様変更への柔軟な対応 — サイクルごとに計画を見直せる
- リリースまでの期間短縮 — 優先度の高い機能から段階的にリリースできる
- 顧客・利用者の声を反映しやすい — 動作するソフトウェアで早期に検証できる
- 手戻りコストの抑制 — 早期テストで問題を発見できる
1. 仕様変更への柔軟な対応
アジャイル開発の最大の利点は、仕様変更への柔軟な対応力にあります。短いサイクルごとに計画を見直す仕組みのため、開発の途中で市場動向や顧客要望が変化した場合でも、次のサイクルから対応方針を修正できます。ウォーターフォール開発のように前工程まで戻って修正する必要がないため、変化に強い開発体制を維持しやすくなります。
2. リリースまでの期間短縮
この手法では、機能を小さな単位に分割して開発を進めるため、リリースまでの期間を短縮しやすくなります。すべての機能が完成するのを待つ必要がなく、優先度の高い機能から段階的にリリースすることが可能です。このため、市場投入のスピードが重視される案件において特に効果を発揮します。
3. 顧客・利用者の声を反映しやすい
各サイクルの終了時に動作するソフトウェアを確認できる仕組みを持つため、顧客や利用者からのフィードバックを反映しやすいという特徴があります。実際の利用シーンに近い形で早期に検証できるため、次のサイクルの開発に改善点を取り入れやすくなります。
4. 手戻りコストの抑制
短いサイクルの中で早期にテスト・検証を行うため、手戻りコストを抑制しやすくなります。問題点を開発の早い段階で発見できることから、開発終盤になって大規模な修正が必要になる事態を避けやすくなります。
これらのメリットは、特に仕様が流動的なプロジェクトや、リリース後の利用者フィードバックを踏まえた改善が前提となる案件において効果を発揮しやすい傾向があります。
アジャイル開発のデメリット
デメリットは、体制設計の段階で判断すべき以下の3つの課題に集約されます。
- プロジェクト全体の見通しが立てにくい — 完成イメージが初期段階で見えにくい
- 進捗・予算の管理が難しい — 仕様の流動性に起因する見積もりの不確実性
- 開発チームに高い自律性が求められる — 指示書頼みの進め方では機能しにくい
1. プロジェクト全体の見通しが立てにくい
アジャイル開発では、詳細な仕様を最初にすべて確定させないため、プロジェクト全体の完成イメージや最終的な機能範囲が見えにくいという課題があります。各サイクルで内容を調整しながら進める性質上、初期段階で全体像を厳密に把握したい発注者にとっては、不安要素になりやすい側面があります。
2. 進捗・予算の管理が難しい
この進め方は仕様が流動的に変化するため、進捗状況や最終的な予算を正確に見積もることが難しい傾向があります。ウォーターフォール開発のように工程ごとの完了基準が明確でない分、進捗管理の指標を別途設計し、継続的にモニタリングする体制が必要になります。
3. 開発チームに高い自律性が求められる
この手法では、詳細な指示書に沿って作業を進めるのではなく、開発チーム自身が状況を判断しながら開発を進める自律性が求められます。チームメンバーの経験やコミュニケーション能力が不足している場合、サイクルごとの意思決定が滞り、開発の質やスピードに影響が出ることがあります。
これらのデメリットは、後述する「失敗する原因」とも密接に関わっています。導入を検討する際は、仕様変更の想定頻度と発注者側の関与可能時間の2軸で、自社の体制が短期反復型の開発に適しているかを事前に判断しておく必要があります。
「アジャイル開発のデメリットを見て、自社で進められるか不安がある」という方へ
カオピーズでは、プロジェクトの目的・仕様変更の可能性・社内リソースの状況を整理したうえで、アジャイル開発・ラボ型開発・ウォーターフォール開発を含めた最適な開発体制をご提案します。
開発体制について無料相談する →アジャイル開発が失敗する原因
アジャイル開発が失敗する原因は、手法そのものではなく、運用体制や関与の設計が不十分なまま進めてしまうことにあります。特に、失敗につながりやすい要因は以下の3点です。
- コミュニケーション不足によるチーム機能不全 — 認識のズレや課題共有の遅れが蓄積する
- 役割・体制が機能していない — プロダクトオーナーやスクラムマスターの責任範囲が曖昧になる
- 発注者側の関与不足 — レビューや意思決定が遅れ、開発の方向性がずれる
図5: 失敗につながる主な原因と対策
1. コミュニケーション不足によるチーム機能不全
アジャイル開発では、チーム内での密なコミュニケーションが前提となります。各イテレーションの計画・レビュー・振り返りにおいて、メンバー間で状況や課題を共有できていない場合、認識のズレが積み重なり、開発の方向性が徐々にずれていきます。特にリモート環境や外部リソースを含むチーム構成では、意識的にコミュニケーションの機会を設計しないと、この問題が起こりやすくなります。
2. 役割・体制が機能していない
この体制には、プロダクトオーナーやスクラムマスターといった役割が明確に機能していることが前提となります。これらの役割が形式的にしか置かれておらず、実際の意思決定や優先順位付けが曖昧なまま進行すると、イテレーションごとの計画が場当たり的になり、開発の一貫性が失われやすくなります。
3. 発注者側の関与不足
この進め方は、発注者側が各イテレーションに継続的に関与することを前提としています。要件定義時にまとめて関与し、以降は完成を待つという従来型の関わり方のままでは、途中のフィードバックが得られず、開発チームが判断に迷う場面が増えます。その結果、完成したソフトウェアが当初の期待とずれてしまうリスクが高まります。
アジャイル開発が向いているケース・向いていないケース
この手法はすべてのプロジェクトに適しているわけではなく、案件の特性によって向き不向きがあります。向いているケースと向いていないケースを整理したうえで、外部リソース活用時の費用面も確認しておくと、導入判断がしやすくなります。
向いているプロジェクトの特徴
以下のような特徴を持つプロジェクトに適しています。
- 仕様が流動的で、開発途中の変更が想定されるプロジェクト
- 市場投入までのスピードが重視される新規サービス開発
- 利用者の反応を見ながら機能を改善していきたいプロジェクト
- 発注者側が継続的にプロジェクトへ関与できる体制を確保できる場合
向いていないプロジェクトの特徴
一方で、以下のような特徴を持つプロジェクトには、この手法はあまり適していません。
- 仕様が厳密に確定しており、途中変更が想定されないプロジェクト
- 法規制対応など仕様変更の余地が少ない案件
- 進捗・予算を厳密に管理する必要がある大規模基幹システムの刷新
- 発注者側がプロジェクトに継続的に関与する時間を確保できない場合
体制・費用面で押さえておきたいポイント
外部リソースで進める場合、体制面だけでなくラボ型開発の費用についても、契約前の見積もり段階で稼働期間・体制人数・契約更新条件の3点を確認しておく必要があります。
ラボ型開発のメリットは、準委任契約に基づいて一定期間チームを専任で確保できる点にあり、請負型のように成果物単位で費用が確定するのではなく、稼働期間や体制人数に応じて費用が変動する仕組みになっています。そのため、想定するチーム規模(人数)と契約期間(月数)を提示したうえで、初期見積もりを契約前に受け取っておくのが実務上の進め方です。「ラボ型開発 費用」で情報を探している場合も、月額単価だけでなく、契約期間・チーム構成・稼働率まで含めて比較することが重要です。
アジャイル開発を外部リソースで進める場合の費用感を知りたい方へ
ラボ型開発は、チーム人数・契約期間・稼働率によって費用が変動します。詳しくは「ラボ型開発の費用感について詳しく知る」をご覧ください。
ラボ型開発の費用感について詳しく知る →アジャイル開発の代表的な手法
アジャイル開発の代表的な手法は、以下の4つに分類されます。いずれも「短いサイクルを繰り返しながら開発を進める」という基本思想を共有していますが、チーム運営やタスク管理の方法に違いがあります。
- スクラム(スクラム開発) — 固定期間のスプリントと明確な役割分担を軸に進める手法
- カンバン — タスクの流れを可視化し、継続的に処理する手法
- エクストリーム・プログラミング(XP) — コード品質を高める技術的実践に重点を置いた手法
- FDD・リーン開発など — 機能単位の計画や無駄の排除を重視する派生手法
スクラム(スクラム開発)
スクラム開発は、短期反復型の開発の中でも最も広く採用されている手法です。「スプリント」と呼ばれる1〜4週間程度の固定期間を1サイクルとし、その中で計画・開発・レビュー・振り返りを行います。チームには「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「開発メンバー」という役割が設けられ、それぞれが明確な責任を持って進行します。スプリントごとに動作するソフトウェアを完成させ、その成果を関係者に共有しながら次のスプリントの計画に反映していく点が特徴です。
図2: スクラムにおける1スプリントの流れ
カンバン
カンバンは、タスクの状態を「未着手」「対応中」「完了」といった列で可視化し、チーム全体の作業状況を一目で把握できるようにする手法です。スクラムのようなスプリントという固定サイクルを設けず、タスクが完了次第、次のタスクに着手する継続的な流れを重視します。各作業列における同時進行タスク数の上限を設けることで、特定の工程にタスクが滞留する事態を防ぎやすくなります。
図3: カンバンボードによるタスク管理の流れ
エクストリーム・プログラミング(XP)
エクストリーム・プログラミング(XP)は、開発チームの技術的な実践に重点を置いた手法です。ペアプログラミングやテスト駆動開発、継続的インテグレーションといった実践を通じて、ソフトウェアの品質を早期かつ継続的に高めることを重視します。仕様変更への対応力だけでなく、コードの品質そのものを維持・向上させる仕組みを重視している点が、他の手法との違いです。
図4: XPを支える主な技術的実践
その他の手法(FDD・リーン開発など)
上記3つの手法以外にも、短期反復型の開発にはいくつかの派生的な手法が存在します。FDD(ユーザー機能駆動開発)は、顧客にとって価値のある機能単位で開発計画を立て、各機能を短期間で設計・開発していく手法です。リーン開発は、製造業の生産方式から着想を得た考え方で、無駄な工程やリソースの浪費を排除しながら、価値のある成果物を効率的に生み出すことを目指します。プロジェクトの特性やチームの状況に応じて、これらの手法を組み合わせて活用するケースも見られます。
アジャイル開発の進め方
実際に進めるには、リリース計画の策定からイテレーション(スプリント)の反復、そして開発体制の構築まで、大きく3つのステップを順に踏んでいきます。
1. リリース計画を立てる
最初のステップは、プロジェクト全体のリリース計画を立てることです。すべての仕様を詳細に確定させる必要はありませんが、開発する機能の優先順位や、大まかなリリース時期の見通しを事前に整理しておく必要があります。この段階で優先順位を明確にしておくことで、各イテレーションで何を先に開発すべきかの判断がしやすくなります。
2. イテレーション(スプリント)を繰り返す
リリース計画に基づき、イテレーション(スプリント)単位で開発を繰り返します。各イテレーションでは、計画・設計・実装・テストの工程を完結させ、動作するソフトウェアを完成させます。イテレーションの終了時にはレビューと振り返りを行い、その結果を次のイテレーションの計画に反映させます。このサイクルを繰り返しながら、プロジェクト全体の完成度を段階的に高めていきます。
3. 開発体制の選び方(社内チーム/外部リソース活用)
この開発を進める体制は、社内チームのみで構成する方法と、外部リソースを活用する方法の大きく2つに分かれます。
社内チームのみで進める場合、意思決定のスピードが速く、社内の業務知識を反映しやすいという利点がありますが、エンジニア不足やスキルの偏りが課題になりやすい傾向があります。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)『DX動向2025』(2025年)では、日本企業の約85%(85.1%)がDXを推進する人材の不足を認識しており、米国・ドイツ企業と比較して顕著に高い水準にあると報告されています。
一方、外部リソースを活用する方法として、ラボ型開発と呼ばれる契約形態があります。ラボ型開発は準委任契約に基づき、発注者専任のチームを外部に構築する仕組みで、仕様書が確定していない段階からチームを編成し、開発を進めながら仕様を一緒に作り上げていくことが可能です。仕様変更を前提とする開発とは相性が良く、社内のリソース不足を補いながら、自社チームに近い形でプロジェクトを進められる点が特徴です。
アジャイル開発の事例
実際のプロジェクトでどのように機能するかを、新規Webサービスの立ち上げ・既存システムの機能改善・社内業務プロセスのデジタル化という3つの導入シーンで確認します。
図5:アジャイル開発の事例別活用イメージ
事例 1:新規Webサービスの立ち上げ
背景・課題
新規Webサービスを立ち上げるプロジェクトでは、市場のニーズが確定していない段階で開発を始めるケースが多く、事前にすべての仕様を確定させることが難しいという課題があります。
進め方
まず、サービスの中核となる機能を洗い出し、優先度順に並べ替えます。最も優先度の高い機能から1〜2週間のイテレーションで開発し、最小限の状態で早期にリリースします。リリース後は、実際の利用者の行動データや問い合わせ内容からフィードバックを収集し、次のイテレーションの計画に反映します。このサイクルを、主要機能が出揃うまで数回にわたって繰り返します。
得られる効果
この進め方により、市場の反応を見ながら機能の方向性を調整できるため、開発途中で想定していた需要とのズレが判明した場合でも、大規模な手戻りを避けながら軌道修正することが可能になります。結果として、初期段階で仕様を完全に固め切れないサービス開発においても、無駄な開発工数を抑えながらリリースまでたどり着きやすくなります。
事例 2:既存システムの部分的な機能改善
背景・課題
稼働中の業務システムに新機能を追加する場合、既存の業務フローや他機能への影響を最小限に抑えながら開発を進める必要があるという制約があります。
進め方
まず、追加する機能を影響範囲ごとに小さな単位に分割し、それぞれを1つのイテレーションとして設計します。各イテレーションでは、対象範囲を限定したうえで開発とテストを行い、既存システムの他機能に影響が出ていないかを確認します。イテレーションの終了時には、実際にシステムを利用する部門の担当者にレビューへ参加してもらい、業務フローに即した動作になっているかを確認します。指摘があった場合は、次のイテレーションで修正を反映します。
得られる効果
この体制により、リリース後に業務フローと機能がかみ合わないという事態を防ぎやすくなります。利用部門の担当者が開発の早い段階から関与するため、完成時に大きな認識のズレが生じにくく、現場の要望を反映した形で機能を完成させやすくなります。
事例 3:社内業務プロセスのデジタル化
背景・課題
社内の業務プロセスをシステム化するプロジェクトでは、現場の実際の業務手順とシステムの動作が乖離しやすいという課題が生じがちです。
進め方
まず、対象となる業務プロセスを複数の工程に分割し、業務への影響度や緊急度をもとに優先順位を設定します。優先度の高い工程から順にイテレーションを組み、各イテレーションの完了時には、実際に業務を行う現場担当者がシステムを試用します。試用の際には、操作性や業務手順との適合性についてフィードバックを収集し、次のイテレーションで改善を反映します。この一連の流れを、対象業務プロセス全体をカバーするまで繰り返します。
得られる効果
このプロセスを繰り返すことで、現場の実務に即したシステムを段階的に完成させることができます。現場担当者が早期からシステムに触れる機会を持つため、稼働開始後の大幅な手戻りや、利用が定着しないといった事態を抑えやすくなります。
まとめ
アジャイル開発は、短いイテレーションを繰り返しながら開発を進める手法であり、仕様変更への柔軟な対応やリリースまでの期間短縮といったメリットをもたらします。一方で、進捗管理の難しさや発注者側の継続的な関与といった課題も伴うため、プロジェクトの特性を見極めたうえで導入を検討する必要があります。特に、コミュニケーション不足や役割の形骸化といった失敗要因を事前に理解し、体制づくりの段階でコミュニケーション設計・役割定義・発注者の関与ルールを合意しておくことが、アジャイル開発を成果につなげる実務上の分岐点になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. アジャイル開発は1つの手法を指す言葉ですか?
いいえ、アジャイル開発は特定の1つの手法を指すものではなく、「短いサイクルで開発と見直しを繰り返す」という開発思想・アプローチ全般を指します。スクラムやカンバンといった具体的な手法は、この思想を実践に落とし込んだものであり、「特定の手法を導入する」こととは、必ずしも同じ意味ではありません。
Q2. アジャイル開発の費用相場はどのくらいですか?
アジャイル開発を外部リソースで進める場合、ラボ型開発のような準委任契約を活用するケースが一般的です。費用は稼働期間や体制人数に応じて変動する仕組みのため、想定プロジェクト規模と期間を提示したうえで、複数社から個別見積もりを取得するのが一般的な進め方です。
Q3. アジャイル開発を導入する際の注意点は何ですか?
アジャイル開発を導入する際は、発注者側が各イテレーションのレビュー・振り返りに定期参加できる体制(週次または隔週の関与時間の確保)を、契約前に社内で合意しておく必要があります。また、プロダクトオーナーやスクラムマスターといった役割を形骸化させず、明確な責任のもとで運用することも、失敗を防ぐうえで欠かせないポイントです。
Q4. スクラム・カンバン・XPはどのように選べばよいですか?
複数ある手法の中からどれを選ぶべきかは、チームの規模や重視したいポイントによって異なります。役割分担を明確にして計画的に進めたい場合はスクラム開発、タスクの流れを継続的に処理したい場合はカンバン、コードの品質そのものを重視したい場合はエクストリーム・プログラミング(XP)が選択肢になりやすい傾向があります。1つの手法に固定せず、プロジェクトの性質に応じて要素を組み合わせるチームも少なくありません。
Q5. 自社のプロジェクトがアジャイル開発に向いているかは、どう見極めればよいですか?
向き不向きを判断する際は、「仕様変更の可能性」と「発注者側が関与できる時間」の2軸で自社の状況を確認することが実務上のポイントになります。仕様変更の可能性が高く、かつ発注者側が定期的にレビューへ参加できる体制がある場合はアジャイル開発が適していますが、いずれか一方でも条件を満たせない場合は、体制面から見直す必要があります。
参考文献
-
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA).(2025).
「DX動向2025」.
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html
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